前回ブログで、逗子斜面崩落事故の第1回口頭弁論について、管理組合側の主張をとりあげました。管理組合は原告からの請求棄却を求めたのですが、同時に、この事故では、管理組合は分譲業者や販売会社らに対して、土砂の撤去や崩落防止のための保全工事費等の実際に生じた費用(管理組合の側からいうと損害)について、損害賠償を求める訴訟を準備しているとも言われている。
そして今回の話題ですが、管理組合は「敷地の管理を専門家である管理会社に委ねてきたため、斜面地の風化(岩の風化)や亀裂の存在も知らなかった」と主張している内容です。
この事故は、原告側は、マンションの開発業者が地質を調査した結果、斜面の対策工事の必要性や風化による強度低下が指摘されていたと訴状で述べています。管理組合はこの事実を知らず、事故の後にその調査結果(書面)を知ったと述べています。たぶん、それは事実でしょう。だって、だれでも、その状況にあるならばマンションの購入を差し控える可能性があると思われます。しかし、問題はそこから、いったん分譲会社や販売会社から引き渡された書類は、管理組合が保管義務を負いますので、はたして、その文書はどこに保管されており、だれが閲覧したことがあるのか。
上記書面は管理員室に保管される建築確認申請図書に含まれていた、と言われているが、管理会社もこの書面の存在を知らなかったと語っているようだ。
管理会社がこのように発言するのは、分る気がする(もちろん、それで管理会社に一切の責任がないとは思わないけど)。例えば、建築確認関係の図書は、多くの場合、管理員室や管理組合の倉庫などに保管されていることが多い。建築確認というのは、竣工時の書類で、実際に入居者が目にすることは少ない。たまに中古マンションの売買にて、仲介業者が売買前の情報(重要事項調査という)として、取得したいと言ってくることがある。そのために、私が管理会社に在籍していたころは、担当物件の建築確認図書をコピーしてパソコンに入れていた。しかし実際に使用するのは、建築確認の日付や登録番号であって、図書全てに目を通した記憶は少ない。また中古マンションなどでは、管理会社が変更になったり、自主管理だったものが管理会社に委託したりで、管理者が変わることが多い。例えば、管理会社が変更になるときは、管理会社同士で保管資料の引継ぎを行うのが一般的だが、非協力な管理会社も多いし、行っても保管資料一覧表を説明するのみで、中身まですべて目を通さない。それに目を通していると、それだけで1か月は優にかかる。
同マンションにて、斜面の対策工事の必要性や強度低下が指摘された文書が建築確認図書に含まれていても、中身まで見ていないのではないだろうか。それが正直なところだ。もちろん、管理会社や管理組合の中で、その書類の有無に気づき、危険を察知して斜面の管理を行っていれば、事故は回避できた可能性はあると思う。それはとても残念なことだ。
問題は、斜面がそのような状態にある事実を明らかにしないままマンションを建築、購入者に説明せずに販売を行った分譲会社や設計会社、販売業者の責任は追及されるべきであると思われる。一体だれが、その事実を知っていて、どこで情報の開示を止めてしまっていたのか。それと、そのような危険な状態であっても行政からの建築確認が降りるのかどうかは私には分からない。
上記のように管理員室に保管されていたというその書類の内容等については明らかにはされていません。
このように、この事故は、管理組合の保管書類の中に、危険を指摘するような書類が実はあり、だれもその存在に気が付いていないことがあるのだ、ということを教訓としてくれる。
それでは、これから管理組合や管理会社が、その書類を一からすべて目を通す必要があるのかどうかだ。普段の日常管理の書類は誰かが目を通しているだろう。でも分譲時にすでに完成しており、引き渡すだけの書類は、今から、読み解くのに大変な作業だ。マンションの設計時に作成する構造計算書など、素人が今読んでも、まず理解できない。
建築確認がとれていれば、だれでも普通に安全なマンションだと思って購入しますよね。(確かに、皆様それを信じて購入したマンションが耐震偽装だったりしたのですが、、、💦)。