外壁タイルの劣化は瑕疵か

 瑕疵担保という言葉があります。読み方は「かし」。日常生活では、あまり使いませんけど、建築業界なんかでは、わりと一般的ですよね。
 マンション管理でも、たまにお客様から、この言葉を聞きます。わりとドキッとしますよね。もし本当に瑕疵なら大変なことだし、それを認めて補修するまでに時間もかかるでしょうから。
 築年数が経過すると建物も設備も劣化してきます。それと瑕疵は違います。マンションの分譲業者の立場から言うと、「主要な構造耐力上に何らかの傷があり、購入者の要望を満たすことができない(=目的を達成することができない)」状態です。図面上入っていなければならない鉄筋が抜けているとか、、、。
 マンションにおいて分譲会社の瑕疵担保責任は引き渡しから10年で消滅するというのが一般的です。この10年という数字は、わりとお客様も知っていて、そのため10年経過する前に、劣化診断をしたり、保証のあるうちに調べて責任を追及しようとしたりします。姿勢としては大事なことだと思います。

 そこで、今回の問題は、タイルの剥離について。
 やはりマンションの大規模修繕の時期になると、タイルの話題になります。もちろん屋上防水なども大きな話題ですが、タイルが落ちると第三者にも被害を与える恐れがあり、それはなんとしても避けたい。危険を早めに察知して、対処したいというのは、どの管理組合でも同じです。
 そこで、必ず出てくる話題が、「なんで、こんなにタイルが浮いているのか。施工ミスではないのか」という話。これが、やがては、タイルの浮きは、瑕疵担保責任ではないのか。ならば築10年以内であれば、分譲会社に修繕してもらうべきだ、という意見が出て、もめるという構図。
 まず結論から言うと、タイルの浮き劣化は、瑕疵担保とみなすことは難しいと思います(もちろん状況によりますよ)。1回目の大規模修繕工事を築12年くらいで行ったマンションで、タイルが全く浮いていないマンションはありません。少ない場合は2%くらい。3~5%くらいが平均ではないでしょうか。それらがすべて瑕疵担保であれば、多分、日本に存在するマンションは、すべて瑕疵担保物件となります。
 しかし、タイルの剥離は、一方では「放置すれば生命・身体・財産に対する危険が現実化する」ことは事実で、「(これは)建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」(最高裁平成23年7月21日判決)と考えられもします。
 ほら、やっぱりタイルの剥離は瑕疵でしょ。って話になりそうですが、要するに、瑕疵を証明するには過失を証明しなければならず、不法行為を証明して賠償請求するということになります。劣化という現象は一般的にあるので、それは過失ではなく、現在の施工技術では、必ず建物は劣化します。それが前提であるため国交省もマンション管理業協会、マンション管理センターもすべてが、長期修繕計画表の作成や周期的な大規模修繕を推奨するわけです。つまり現在の技術水準では、劣化は過失ではなく、不法行為ではない。ただし、築10年でタイルが100%落ちたという話であれば、何らかの隠れた瑕疵があったのかも知れませんが、、、。
 (※施工会社の責任は、また分譲会社の瑕疵担保責任とは異なる)

 特定建築物定期調査という法律上の点検があります。これは建築基準法12条に基づく定期点検です。内容は国交省告示第282号に詳細が書かれています(前回ブログで説明)。これによると、マンションは築10年経過したら、タイルの全面打診を実施しなければならず、その後、3年ごとにタイル打診を可能な範囲で行わなければならないとされています。


 つまり、この点検を怠って、タイルの剥離があり事件が起これば、むしろ管理組合が管理責任を追及されることになるのです。

 
 

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