現在、お世話になっているマンションが、時期的に大規模修繕工事の実施検討に入っており、工事計画作成と同時に長期修繕計画表の再作成も同時に行っています。工事と計画表を同時に検討しているのですが、どちらも作成段階で、劣化診断が必要ではないか、という話しになっており、今、その劣化診断の見積書を取得しているところです。同マンションでは、理事会の諮問機関として修繕委員会を立ち上げ、健全な管理組合運営をしています。工事までのフローチャートもしっかりしており、劣化診断の結果を見て、長期修繕計画を見直し、工事の時期もある程度推定できると考えています。
劣化診断の見積金額は、その内容次第でいろいろなのですが、劣化診断の専門業者に依頼するつもりで、以下のような項目を考えています。
(1)建物打診(当マンションは外壁はタイル貼り)
(2)シールの引っ張り試験
(3)コンクリートの中性化試験
(4)塗膜の付着強度試験(アタッチメント使用)
(5)躯体、鉄部等の劣化度目視(躯体はエフロ現出状況、鉄部はチョーキングの状
況)
当ブログの読者の方でも劣化診断を外部に依頼された経験をお持ちの管理組合もあるだろうと思う。ここで、少しこぼれ話的なお話を一つ。多分、これは業界ではだれでも知っていて、管理組合サイドでは、ほとんど知らない話しです。
我々(マンション管理業に身を置く者)が、顧客から劣化診断の依頼を受けた場合は、次の2つのケースを考えます。工事実施業者がほぼ特定されているケース。工事実施の有無とは関係なく、単体として劣化診断を検討するケース。
前者の場合は、劣化診断は、多くがメーカーを呼んできます。シールの引っ張り試験であれば、シールメーカーを。塗膜の付着強度試験であれば、〇〇ペイントなどの有名メーカーを呼びます。彼らは、実際に工事が行われた際に、ぜひ自分たちの会社の塗料を選定してほしいと思っているので、ある意味、営業の意味で、無償で診断をしてくれます。もちろん、彼らを呼んでくるためには、ある程度のコネクションが必要ですが、そこそこのデベ、修繕業者さんなら呼ぶことが可能です。ただし、それぞれのメーカーの劣化診断結果を、誰かがまとめる必要性が出てきます。
後者のケースは、劣化診断に特化した専門業者に診断を依頼する場合です。私はこちらをおすすめします。もちろん有償となります。でも。やはりしっかりしています。まず、どのような劣化診断が必要かの説明があり、上記の(1)~(5)のような診断を行い、結果分析がしっかりしていますね。
長期修繕計画だけを見直すために劣化診断を実施するとか、工事仕様を作成したいという場合は、やはり後者の方法がよろしいかと存じます。
よく、当社は無償で劣化診断を行います、という業者がいますが、それは前者で、工事を請け負えることが前提となっており、請負の可能性が低くなってくると、そこまで親切な劣化診断は行ってくれないと思います。
さて上記の(1)~(5)の劣化診断ですが、やはり大変なのは(1)です。タイルがどれほど浮いているかを調査する打診検査です。これは、建物の表面全体を打診棒でたたき、その音から、タイルの浮き箇所を特定し、それをプロット図として図面に落とし込みます。この打診範囲をどこまで設定するかで、料金も変わってきます。建物全体をたたくためには、屋上からゴンドラ等をおろしてたたきます。昔はよくブランコと呼ばれるもので業者が降りていきました。これだと全面がたたけるので、計画図としては完璧です。
工事の見積書を取得する際にも、タイルがどれほど浮いているか。タイルを貼り変える箇所や注入方法で修繕する箇所等が、ある程度明確であれば、見積金額が特定できます。多くの場合は、それは推定で計算しています。凡そ3~5%とかの数字で計算することがほとんどです。
しかし建物全体を打診するには、それなりの費用もかかります。そのため、可能な限り手の届く箇所を打診して、ベランダ内にも入れていただき、手の届く範囲を打診すれば、全体を打診しなくても、ある程度の母体が出ますので、その浮きのパーセンテージは全体の浮き枚数とそれほど大差がないのが普通です。
最初にご紹介したマンションでは、全面打診かどうかは、まだ決めていませんが、ある程度の打診を行って母体を出すことになると思います。
じつは建築基準法第12条では、平成20年以降、ビル、マンション等では、竣工後10年を経過した場合、外壁調査を行う必要があり、3年ごとの点検(特定建築物定期調査)が義務付けられており、点検の詳細は国土交通省告示第282号により詳細な内容が告示されています。
建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の反転