築年数がある程度経過したり、大規模修繕工事の時期が近づくと、建物の劣化度を調査すべきである、との意見が出ます。それはやってもよいし、やらなくてもよいと言えます。劣化しない建物は無いし、修繕工事を実施するのであれば、工事の開始時にある程度の劣化度は見えてきます。例えば、足場を構築した段階でタイルの浮き調査などは行うのが一般的ですので、その時点で、劣化度は分かるということです。
それならば工事前の劣化度調査が必要ないかというと、そうとも言い切れない。その調査結果をどのように利用するかによって。調査診断の必要性が決まってきます。
大規模修繕工事は10年~12年周期だとよく言われますが、あくまで一般論で、建物の立地条件や普段の維持メンテナンスの実行度で、その周期も大きく変わってきますし、普段より小修繕で建物を維持しているマンションでは、修繕工事の実施時期が先延ばしできると思います。
最近、お世話になっているマンションで、建物劣化診断(そのマンションでの名称は建物調査診断)を行うこととなりました。同マンションでは、一般的な修繕周期がきており、数年前から話し合いが行われてきましたが、本当に実施する時期であるのかどうかという決定ができませんでした。また同時に長期修繕計画表も10年以上前に作成したものが据え置かれており、新たな長期修繕計画表が必要でした。
そのため、まずは建物劣化診断を実施して、それをもとに長期修繕計画表を再作成する。それを見て、工事仕様等を決め、修繕時期を決定したいと考えました。
上記のような考え方は、非常にオーソドックスであると思います。
そこで今回のブログでは、建物劣化診断とは、どのようなことを行うのか等を紹介してみたいと思います。
簡単に言うと、以下のような項目を実施するのが一般的です。
・外壁表面調査(廊下やベランダ含む)
・シーリング性能、硬度測定
・コンクリート中性化調査
・塗膜(塗装)接着性能調査
以上4つです。
さて以上4項目が一般的な建物劣化診断ですが、はたして誰に頼めばいいのか。費用はいくらくらいなのか。
日常の管理を管理会社に委託している場合は、まずは管理会社に相談することでしょう。管理会社に営繕部がある場合は、彼らがメーカー(塗料やシールメーカー)を呼んできます。普段からお世話になっている建設会社があれば、そこでもよいでしょうが、せっかく管理会社がいるのならお願いするのが楽です。
費用はずばり、適正価格はありません。適正価格がないとはどういうことなのか。じつはこの劣化診断ですが、プロなら無料でやることも可能なのです。なぜなら、そこそこの建設会社なら、普段からメーカー(素材メーカー)との付き合いがあり、メーカーは自分たちの材を購入使用してほしいため、建設会社にたいして無償で調査をして、大規模修繕工事の際に、納入をしてもらおうとします。あとは大規模修繕工事の入札が確実だという自信があれば、打診調査も(手の届く範囲であれば)無償で行うこともあるからです。
しかし、タダほど高いものはない。ここはしっかりと費用を払うべきだと思います。そうすればしっかりとした報告書が提出されます。
外壁のタイルを100%打診するためには足場を構築したり、屋上からブランコをつるす必要があるため、これは絶対に費用がかかります。1棟100万円くらいは覚悟してください。
しかし100世帯のマンションで修繕工事が1億円と考えた場合、100万円は1%です。高いようでも、全体の工事費用の中に占める割合はそれほどでもありません。
私は、上記4項目を含む劣化診断調査を100世帯100万円くらいで提示することが多いですが、問題は、修繕工事の何割くらいなのかと考えるべきだと思います。
また大事なことは、長期修繕計画表の中に、10年~12年サイクルで劣化診断調査費用を計上しておくべきではないかと考えています。