今年(令和3年)6月22日に公表された改正標準管理規約では、ITによる理事会・総会の開催方法や共用部の利用、配管等の工事費用等、いくつかのか改正が見られた。
国交省が公表するマンション標準管理規約は、たびたび改正されるが、改正の理由は、やはり社会情勢を反映したものが多い。とくに今回のITを利用した会議の開催方法などは、あきらかにコロナ禍によるもの。
今回の改正は、条文だけでなく、コメントの改正も多い。一般の区分所有者で、コメントまで読んでいる方は少ない。条文が改正されたら、それを知ることは多いのだが、コメントとは、要するに読み解き方。つまり条文の読み解き方(まあ、解釈ということ)が変更になっても、表面に出てこないため、管理会社やマンション管理士でも見落としてしまう。
今回の改正ではコメント改正も結構多いのだが、今回紹介するのはコメントではなく、あまり目立たない条文の一部変更。規約第35条3項の理事の選任・解任についての改正があった。
これは最高裁平成29年12月18日の判決を受けてのものだと思われる。まずは、これまでの条文を紹介する。35条3項の「理事長、副理事長及び会計担当理事は理事のうちから理事会で選任する。」という条文。これが次のように変更された「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって理事のうちから選任し、又は解任する。」
上記の太文字の部分が改正部分ですが、要するに理事会の互選で選任された理事長は、同じ理事会にて解任することができる、という判断だ。
また同条文(35条3項)の変更に伴い、第54条1項11号に「理事長、副理事長及び会計担当理事の選任及び解任」という号が追加された。これも新設の条文だ。間違えてはいけないことは、これは理事長等役職を解任するという条文であり、理事を解任することはできない。理事は総会において選任されているので、理事の解任は総会の決議が必要なのは言うまでもない。そのことは今回の改正に伴うコメントの改正にも説明されている。
第51条2項コメントに②として以下のような文が追加された。「理事の互選により選任された理事長、副理事長及び会計担当理事については、本項に基づき、理事の過半数の一致によりその職を解くことができる。ただし、その理事としての地位については、第
35条第2項及び第48条第二号に基づき、総会の決議を経なければその職を解くことができない。」※48条ー役員の選任及び解任は総会の決議を要する。
さて、このような改正がなされたのだが、このことは、実際には、これまでの組合活動の内容と、実質的には変化はない。なぜなら、役員の選任・解任決議は総会に委託された事項であるため、理事長を辞職や解任を受けても役員を退職することはなかったと思われる。
だれもやりたくない理事長を選ぶのさえ、どの管理組合でも一苦労なんだから、よほどのことがない限り、解任決議など起こらない。私自身も、理事長の解任決議など現場ではみたことがない。
たぶん、そのような事態は、よほどの事件が起こったときなんだろうなあ、と思う。もう数年前になるが、ある事件が組合内で発覚し、私的には「これは、かなり理事長の責任を問われるだろうな」と思われる場面があったが、そのマンションではだれも理事長の責任を問わなかった。
みなさん輪番表で役員に就任し、押されて、嫌々ながら理事長を引き受けることが多い中、悪意のない行為については、なかなか理事長の責任だけを取り上げて、指摘する人も少ないのが現状だろう。
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