ともに聞きなれない制度だ。それもそのはずで、まったく新しい2つの制度である。
前者(管理計画認定制度)は国、後者(管理適正評価制度)は業界団体が主導している。
改正マンション管理適正化法が昨年(2020年)6月に成立して、来年(2021年)4月から地方自治体がマンションの管理状況を評価する制度が「管理計画認定制度」である。これは国の示す基準に沿って、各地方公共団体がより詳細な基準を設ける。その基準をクリアした管理組合を(各地方公共団体が)認定するという制度。
一方、マンション管理業協会が同時期に始めるのが「管理適正評価制度」で、それぞれのマンションについて、最高位を「S」として「D]までの5段階に分けるもの。
つまり両制度ともマンションの価値をこれまでの立地や路線だけで評価するのではなく、管理組合の運営状況を正しく評価して、資産価値に反映させようという考えだ。とくに国が始める管理計画認定制度は、本来は機能不全マンション(築年数の経過した建物・居住者ともに老化したマンション)をあぶりだし、正常な組合運営に戻すことが第一目的であったと思われるが、マンション組合運営を評価するということから、そのゴールだけが、少し独り歩きしている感がは否めない。
さて、この両制度、詳細を述べれば、とても複雑なのだが、それば別の機会に譲るとして、まず考えたいことは、すぐにそれを申請するかどうかということだ。つまり両制度ども申請は任意なのである。
それぞれに評価の基準点があり、各項目をクリアしてポイント(点数化)化していくことで組合運営のランクが示される。
高位のランクが示されればよいが、低ランクだと資産価値の低下に影響を与えることも考えられ、自分たちのマンションが高評価を得られないと判断した場合、両制度ともに申し込むことはないだろう。
また高評価が期待されるマンションでも、最低限の申請費用はかかるようだし、1年ごとの更新であれば、毎年費用を予算化する必要もある。はたしてそれだけのメリットがあるのかどうか。中古マンション市場に、どれほどの影響を与えるのかは未知数だ。とくに高評価を得ても、市場動向への影響などは目に見えにくい。そのため、何らかのインセンティブ(例ー損害保険加入条件の優遇)が提示される可能性も示唆されているが、これもまだ未知数。現在、国やマンション管理業協会が保険団体と交渉中らしい。
それに両制度とも任意の申請であれば、どれほどのマンション管理組合が申請するかも、まったく読めない。
これまで、一部のデベロッパーが中心となって優良マンション制度をつくってきたが、公の評価を受けているとはいいがたい。
まずはマンション管理士として、お世話になっているマンションや行政の相談会では、両制度の詳細な説明をしたうえで、判断してもらうこととしている。
しかし一方で、国が本格的にマンション行政に力を入れてきたことは事実であるし、とくに機能不全マンションを無くしていきたいという目的は理解できる。
週刊エコノミストからの孫引きだが、マンション管理業協会によると、全国7万棟超を調査し、同制度において仮採点すると最上位のSランク(100点満点中90点以上)が獲得できそうな管理組合は10%程度だという。
そこで、私がお世話になっているマンションを任意に10棟ほどピックアップして、発表されている評価方法にそって採点してみたが、すべて90点以上はいくと思われた。点数がつかない項目は、消防訓練くらいか(毎年行っていないマンションもあるので)。
まずは来年の4月に両制度が始動してから考えて見るつもりである。
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