どこかから異音がする、というような相談。マンションではよくあります。上下階や近隣の家庭音の場合もありますが、中には、本当にどこから、聞こえるのか?何の音なのか?まったく見当が付かないこともあります。
気になって眠れない、ということで、お宅に伺うと音がしません。常時ではなく、いつ発生するか分からないような音の発生源を特定するのは本当に大変です。
結局、私自身がその音を聞くこともできないまま、いつの間にか音がしなくなった、というケースもありました。
しかし、中には、半信半疑で伺ったお宅で、「あ、この音ですね」と壁に耳をつけて確認したことが何回かあります。それらは何とか頑張って原因(発生源)を調査し対処してきました。
ある上階(10階以上)宅から、深夜になるとどこからともなく「カーン、カーン」という音が聞こえる。無視することも可能だが、気になりだすと眠れないという連絡でした。昼間に伺っても、まったく分かりませんでした。その日の夜に再度伺い、壁に耳をつけてみると確かにします。「カーン、カーン」って音。しかも途切れ途切れですが、鳴りだすと一定のリズムがあります。これは、何かの機械音だと思いました。それが真夜中になると全く聞こえなくなるとのこと。
こういった発生源が分らない音を調べていくときは、いろいろと特徴を聞きだします。どのような時間帯に聞こえるのか。連続音か、一定のリズムがあるかないか等々。
前述の場合、まず専有部の竣工図面から配管図を確認し、その音がする壁にもっとも近い配管を特定しました。それは給水管でした。そこで専有部の給水管をいろいろ調べてみましたが、思い当たるようなことはなし。よく給水管では、ウォ―ターハンマーという現象が出て、それがいろんな異音を発生させますが、経験上、ウォーターハンマーの音ではない。また時間帯がまちまちで、よく調べると昼でも聞こえる。ただ真夜中は止まる傾向にある。
そこで問題の専有宅より1階下の専有部を調べました。するとやはり聞こえました。またその下も。つまり同じ配管ルートを伝わってきている可能性がある。そのため、その給水管のルートをずっとたどっていき、やがては、地下のルートに行きつきました。業者さんと地下にもぐると地下ピット内で「カーン、カーン」と音がする。その場所まで行きつくと、給水管がたまに震えて壁を貫通している部分で、たまに給水管が壁にあたりすれている。その時に音が発生していました。その地下での給水管の震えの摩擦音が、なんと約100mほど先のお宅にまで響いていたのです。この件は、最終的には、給水管が震える原因を特定し(それは、給水ポンプの圧力タンク劣化)震えを止めました。
だらだらと長い説明をお読みいただきありがとうございます。つまり異音は、まったく遠い場所の発生源でも、配管を伝われば、音は伝わるということです。
同じように、壁から「カタカタカタ」と前述と同じような感じで音がするとの連絡がありました。それも給水管でしたが、下階ではしないのに上階だけでした。要するに6階より上階でのみ、同じ系統管から音がします。つまり6階が原因と的を絞り調べたところ、各部屋の外にあるPSボックス(ガス管や給水管、メーターなどが集中しているボックス。PSとはパイプスペースの略)の中にある減圧弁の故障でした。でもそれは見た目では故障とは分かりません。一か八か、減圧弁を取り換えました。すると音は全戸止まりました。間違いなく減圧弁が原因です。脱線してお話しすると、増圧ポンプや給水ポンプを使用しているマンションの低層階には減圧弁がついていることが多い。減圧弁とは圧力(水圧)が強すぎるのを抑制する装置。つまり給水ポンプの近くの部屋は圧力が強く、給水が激しく出ます。それを一定の強さに弱める装置です。上階に行けば圧力は弱くなるのが普通で減圧弁は必要ありません。
このように異音とは、本当にどこが原因が調べるまで、まったく分かりません。でも調べれば、いつかは分かります。問題は、根気強く、時間をかけても丁寧に調べてくれるような管理会社や専門業者を管理組合が抱えているかどうかです。
ストレスの多い世の中ですので、疲れた時など、ちょっとした音でも原因が分からないと気になるし、不眠症にだってなってしまいます。やはり問題は、必ず除去できるという姿勢を持つべきだと思います。