以前のブログで管理会社フロントの担当物件数について感想を述べたことがある。
週刊東洋経済(11月13日号)が「マンション管理」特集を組んでおり、同問題について、掲載している(p58)。実際には担当者の担当物件数ではなく、管理業務主任者の数と物件数で効率化の総合ランキングを推測している。
それぞれのマンションの管理会社担当者を「フロント」と呼ぶのが一般的。まあ、現場の最前線という意味か。多くの人たちが管理業務主任という資格を有しているが、フロントという仕事をこなすためには、同資格は必須ではない。しかし、年1回の重要事項説明(委託契約の更新説明)は管理業務主任という資格が必要である。不動産取引の重要事項説明を宅建士が行わなければならないのと同じだ。そのため管理組合側としては、自分たちのマンションの担当者(フロント)が有資格者であることを望むケースが多い。契約内容の説明(重要事項説明)を担当者が行うほうがスムーズだ。つまり普段の担当者と契約更新の説明者が別であると、情報の共有ができているのかどうかを心配する。
実際には、ある管理会社の管理業務主任者の数とフロントの数は同じではない。また管理業務主任者が全員フロントであるということもない。内勤者(事務方)にも管理業務主任の有資格者もいるだろう。今回の東洋経済誌の指標は、「管理業務主任者1人当たり棟数」と「マンション管理部門売上高」の2つの指標で、各管理会社を評価している。
例えば、東急コミュニティー。管理業務主任者1人当たりの棟数が2.67.これは印象としては少ない。東急コミュニティーは最近、コミュニティーワンという管理会社と合体して、スケールで業界1位となったが、その影響があるのかどうか分からないが、2.67という数字は、かなり少ない。少ないということは、仕事の効率がよいということ。簡単に言うと、担当物件が少ないのだから、仕事に忙殺されないということ。
コミュニティワンには、知り合いもいたが、フロントとしての担当物件数は、相当数あったはずだ。
また同指標で4位とランクされている住友不動産建物サービス。同社での管理業務主任者1人当たり棟数は4.17.先にも述べた通り、事務方の有資格者も含まれているから、当然、現場のフロントの担当物件数はもう少し多いと思う。同社にいる知り合いのフロントの担当物件数は、およそ倍の8物件ほどだ。
住友不動産建物サービスは、重荷となっていた管理物件を1割近く解約したことで有名で、これは事実。私の知り合いも担当物件数が入社時よりもかなり減っている。
さて、一般的に業界順位は管理物件数と管理戸数でランクをつけるので、その場合、2位となる日本ハウズイングは、東洋経済誌指標では30位となっており、管理業務主任者1人当たり棟数は8.53。同社にも多くの知り合いがいるが、全員がフロントであるため、少なくとも担当物件は10棟を優に超すと思われる。知り合いには役職者もいるが、それでも担当物件数は15棟ほどの人もいるはずだ。
東洋経済誌の総合ランキングはスケールメリットを含んだ効率化の順位であるため、このような順位となるのだ。
同誌で総合順位15位(業界順位では3位)の大京アステージは、管理業務主任者1人当たり棟数は6.76.
さて、問題は、同誌の数字をどのように読み解くかなのだが、本当に同順位が管理会社の効率化を素直に表しているかどうかだが、そこは難しい。
前回ブログで報告したように、国交省の査察においても、いまだに重要事項説明違反や管理委託契約書の不備はつねに指摘されている。
これは私の現場での印象だが、委託契約にのっとった3カ月前の委託契約更新申し入れなどは、多くのフロントは忘れていることが多い。
つまり東洋経済誌の効率化順位はとても参考になるが、実際の事務方と現場フロントの情報共有化が、そのまま数字となって表れているわけではない。大手管理会社になればなるほど、部門の壁があり、情報共有化がうまくいっていない面がある。
しかし、同時に同誌の数字からわかることは、たしかに大手のスケールメリットによる効率化は、評価できるということだ。
管理会社のフロントには、かなり実力差があると思う。大切なことは、会社の効率化が情報共有できる体制となっているかどうかということだ。議事録が提出できない。ミスが多いなどの理由で担当者の変更を管理会社に要求した場合、大手は人をかかえているので可能だが、社内の情報共有化ができていないと同じような問題が繰り返されるかも知れない。議事録の提出ができていないことを、社内のだれが知っており、それを問題視し、問題が表面化する前に会社として対応できるかどうかが大事なのである。
スタディング マンション管理士/管理業務主任者講座