管理費の余剰金について

 マンション管理組合の資金としては、大きく管理費と修繕積立金の2つがある。そのため保管口座としては管理費口座と修繕積立金口座があるのが一般的。それぞれの口座の銀行印を同じにしている管理組合もあるだろう。それは問題はないが、できれば印鑑は口座によって別にしておいたほうがよいだろう。
 上記の管理費口座、修繕積立金口座以外に保持している管理組合もある。よくあるのは駐車場積立金口座。これは駐車場の使用料を保管しておく口座。同口座は、多額の費用がかかるであろうことが予測される駐車場の修繕工事を賄うための積立金口座。普段の駐車場のメンテナンス費用は、多くが管理会社の委託契約費用に含まれていることが多く、そういう意味では、管理費口から支出されていることが多い。
 私の経験では、上記以外の口座としては、防災的な呼称の口座。消防関係(火災警報器や防火シャッター等)の長期的修繕を賄うための口座を特別に設置している管理組合もあった。
 このように駐車場保管口座や消防設備保管口座などを持っているマンション管理組合もたまにあるのだが、多くのマンション管理組合では、管理費口と修繕積立金口の2つである。よく管理費等という言葉を使うが、この「等」という中に修繕積立金口が入っている。また駐車場保管口や消防設備口がある管理組合は、すべてこの「等」の中に入っていると考える。

 特例的な「駐車場保管口座」や「消防設備口座」は使用目的が非常にはっきりしている。使用目的を定めてから口座を設置するから、当たり前のことである。

 そこで、よく問題になるのは、管理費と修繕積立金であるが、この2つの口座については、その使用目的は、マンション標準管理規約に明記されている(27条、28条)。
 同管理規約の第27条には、管理費は「通常の管理に要する経費に充当する。」と明記されており、十一項目の使用目的が明記されている。また第28条には、修繕積立金は「特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。」と明記され、同文に続き、「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕、、、(後略)」など特別の管理の意味が明記されている。

 簡単に言うと、管理費は日常管理の費用、修繕積立金は、計画的な修繕費用、と見ることができる。台風が来てエントランスのガラスが割れたら管理費(一般的には管理費の小修繕科目)口から支出。大規模修繕工事費用は修繕積立金口から支出する(大規模修繕の費用は、総会決議による。)

 そこで、いつも問題になるのは、管理費の余剰金だ。余剰金とは、収入と支出の差が黒字になった場合の資金だ。その年に管理費口に1,000万円の収入があり、900万円の支出があったとしよう。その場合、その年は、管理費口は、1,000-900=100で、100万円が残ったことになり、これが管理費の余剰金となる。
 なかなかこれほどの管理費が余剰金となっていくマンションは多くない。どこも管理費の収入と支出はぎりぎりのラインで推移していることが一般的。
 しかし、たまに多くの余剰金が出た場合、この残預金ともいえる余剰金をどのように処理するか。ある程度は、管理費口に残しておけばよいと思う。
 管理費口と修繕積立金口は、言い方を変えれば、管理費口は理事会の判断によって支出でき、修繕積立金口は総会の決議を経て支出できるともいえる。つまり、一度、修繕積立金口に入ってしまったお金は理事会の判断だけでは、そう簡単に取り崩すことができないということ(今の標準管理規約では例外はあるー災害対策に要する費用などは理事長判断で支出できる)。

 多くのマンションでは、余剰金が出た場合、ある程度は理事会の任意で、この余剰金を修繕積立金口に移動している場合が多い。これは適切な処置であると思えるが、移動してしまったら、もう理事会の判断だけでは支出することができない。
 そのため、ある程度の費用は、管理口の余剰金として置いておくことも必要かも知れない。築年数が経過すればするほど、管理費口の小修繕費科目からの支出が増えてくる。その年の修繕費予算だけでは足りなくなることもある。そのような場合に、管理費口に余剰金があれば便利である。

 給水ポンプが故障して給水がストップしてしまった場合、総会の決議を待っている余裕はない。給水を支障なく行うのは、日常管理の範囲だ。ポンプにもよるが、給水ポンプは一般的にはユニットとなっており2台セット。新規に交換するだけで100万円を優に超える費用を要する。このような場合、まずは管理費口から支出するしか方法がない。そのような場合、管理費の余剰金が生きてくるのである。

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