シェアハウスについて思うこと

 もう何年も前のことになるが、あるマンション(Aマンション)で管理規約の改正を行った。総会では反対もなく、すんなり可決されたのだが、素案の作成には半年近くかかった。
 理事会の諮問機関として規約改正委員会を立ち上げ、実質的なことは、同委員会にまかせて、理事会は最終チェックをしただけで上程をした。

 同管理規約素案作成にて、もっとも時間を使ったのは、言葉の定義だった。特に考えたのがシェアハウスだった。当時は、オリンピック前だったし、同マンションは都心中の都心にあり、多くの観光客が訪れることが想定された。理事の多くも館外オーナーであったため、中には投資的にマンションを所有している方もいた。つまり、居住者と立場と投資的に所有している方とは、かなり考え方が違う。

 まず問題になったのは民泊だった。同マンションでは原則、民泊は禁止した。それについても、いくつかの意見があったのだが、治安やゴミ出しルールなどのことを考えれば、民泊は居住者の賛同を得ないだろうと思われた。
 はたして民泊とは、どのような形態を言うのだろうか。これは簡単だった。民泊は法律上のワード(単語)であり、いわゆる住宅宿泊事業にあたることが明白だった。そのため、同管理規約の中に、法律名を入れて、民泊を禁止とした。

 さて、同マンションでもめたのが、シェアハウスだった。当初、私は少し簡単に考えており、民泊が禁止なのだから、シェアハウスも禁止とするつもりだった。しかし、同マンションの中には、すでにシェアハウスを営んでいる方が結構な人数いたのである。

 たしかにシェアハウスは、ある一定期間、賃借人としてマンションに居住する。多くの人は住民票も移動する。そのため部屋鍵も所有しているし、ゴミ出しルールも守るだろう。つまり一般の賃借人となんら変わりがないのである。同マンションにおいて賃貸契約の存在を許可するのであれば、シェアハウスも許可すべきだという意見が多かった。
 結果的に、同マンションでは、ある一定の要件のもと(人数など)シェアハウスを許可したのだが、この時にシェアハウスの定義をつくるのが大変だった。同マンションにおけるシェアハウスとは、、、という感じで、別表にしてシェアハウスの説明を用意したことを覚えている。

 ここで判例を紹介したい。東京地裁令和2年1月16日判決は、専有部分の「シェアハウス」使用禁止を認めた事例だ。同マンションでは、管理規約と細則にて「シェアハウス」を禁止している。しかし、多くのマンションでは管理規約12条で、専有部分は専ら住居として使用すべきである旨が明記されている。つまりシェアハウスは住居としての使用ではないかということが争点だった。
 言われてみればそうだよね。シェアハウスは、いろんな人が住んでいるが一定期間居住しているし、言ってみれば、親戚の子どもが長期間居候しているようなものだ。ゴミ捨てで会っても、シェアハウスの人か、親戚の子どもか、分からない。

 同裁判では、管理規約通りの「シェアハウス」禁止を認めたのだが、詳細は省くが、要するに、同マンションでは「シェアハウス」の定義が非常にしっかりしている。きっちりと別表まで作成して、いかなる状態が「シェアハウス」かということを明快にして、そのうえで「シェアハウス」を禁止しtいる。また総会決議の際に、シャアハウスを実行しているオーナーが賛成票を投じていることも大きかったようだ。

 この裁判例を、私は、マンション管理センター発行の「マンション管理センター通信」を見て知ったのだが、数年前に、Aマンションにて「シェアハウス」の定義を詳細に決めておいてホッとした次第であった。

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