管理委託契約料金の返金について

 コロナ禍におけるマンション管理の現場も、かなり落ち着いてきたような気がする。当初、かなりのマンションの理事会や総会は延期になったし、定期的な点検も中止や延期となっていた。とくに専有部に入室する必要がある点検は、実施をしても入室を断る専有部もかなりあったし、管理組合もそれを受け入れざるを得ない状態だったと思う。

 あるマンションでは、管理会社サイドが自主的に消防設備点検を共用部だけに絞って行った。それに対して管理組合は、状況からそれを受け入れたが、同時に専有部の入室が無かった分、委託料の一部を返金してきた。管理会社よりその話が出た時に、「まあ、そうなんだろうな」と思ったけれど、返金額については、管理会社の返金額をそのまま受託した。

 これまで委託料を返金するケースは、コロナ感染症が発生する前でも、もちろんあったけれども、今回、多くのマンションで、それが起こったと思われる。その場合、初めて管理組合は、委託料の詳細な中身について再認識したのではないだろうか。

 管理委託料の中身については、毎年行われる重要事項説明や委託契約書の締結時に確認されることだが、毎年、同一更新(同じ委託契約内容の継続)をしている管理組合が多く、重要事項説明書も委託契約書も、その契約期間を書き換える程度で、文書的には大きな違いがない。もちろん、委託契約の内容については、ある程度、把握しているつもりではあるが、その内訳金額までは、あまり認識されていない。
 契約書の内容にもよるが、内訳の書き方も管理会社によって違いもあるし、あまり詳細に書かれていない。
 例えば、消防設備点検(通常年2回)が年額200,000円(込)だったとして、それ以上詳細に考えない。200,000円で年2回だから1回あたり100,000円だろうな、と考えている。多くの場合、その通り料金は1/2のケースが多いのだが、実際には、消防設備点検は1回が機器点検のみで、あと1回は機器点検と総合点検となっているため、2回目のほうが点検項目が多いのである。そのため、2回目の費用を多くしている管理会社もある。毎回の点検が、「今回は総合点検である」と認識している管理組合員はほとんどいない。
 また1回の消防点検の費用の中身まで詳細に考えている管理組合も、まずない。例えば消火器の点検がいくらで、防火シャッター点検がいくら。専有部の火災警報器の点検がいくら、、、とか。また管理会社のほうも、費用をざっくりと出しており、下請けの消防設備点検業者の出してくる費用に何%かを上乗せして管理組合に提案しているだけだ。つまりその詳細な中身までだれも把握していないのが現状だ。
 関係性がうまくいっていれば、それでよいと思う。お互い納得した料金なのだから。しかし、今回のように、返金をする場合、詳細な内訳が分からないと、その返金額が適当なのかどうかさえ分からないのである。

 マンション管理士という仕事柄、たまに管理会社の委託契約料金の妥当性を調査してほしいと言われることもあり、また実際に減額交渉をしたこともある。こちらは、プロであり、管理会社がどのようにして管理委託料を決定しているかは、ある程度は分かる。下請けの費用の出し方。上乗せの仕方。粗利や固定費の出し方などを見て、高額かどうかを見極めるのだが、中には、赤字に近いのではないか、と思われるような委託料もある。そのような管理会社が、今回のようなコロナ禍において、返金を行うのは、仕方ないとしても、やはりかなりつらいのではないかと思う。もちろん実施していない業務の分は、返金が当たり前なのだが、普段からお互いに信頼できる関係性の中で、お互いが納得できる料金体系を組んでいないと、今回のように委託料の内訳を見つめ直した場合、かなりの問題が発覚するのではないかと思う。

 管理組合は管理会社がボッタ食っていると思い、管理会社は、こんなに安い委託料でクレームだらけだ、と思っている。このような関係では、絶対に良好な管理運営はできないし、いつか破綻すると思うのだが、いかがだろうか。

管理委託契約料金の返金について」への2件のフィードバック

  1. 今回の件については意見があります。
    そもそも返金の理由としては、受託者の原因によって委託した点検ができなかった場合であり、コロナの関係で入室を断られた場合は、該当しないのではないかと思います。また、法令点検を実施しない場合は、管理組合の責任にもつながるのではないかと考えます。
    一概に決められない場合も有りますが、オーナーが入室を断った場合は、オーナー自ら点検する事が義務であるのでは無いかと思います。
    ただ、委託料金をもう少し細分化した見積書を作る事は賛成です。一式いくらでは無く、作業項目と数量でいくら、合計でいくら、と決めておく事は必要だとおもいます。
    その上で、どういう理由であれば返金する、という事は、契約書や重要事項説明書などで明確にしておく事が良いと思います。
    あくまで私的な考えですが。

    1. コメントありがとうございます。
      かつてなかったコロナ感染下における状況では、それに対する規約もなく、管理組合も管理会社も
      その対応に右往左往しているのが現状です。法令点検実施の最終責任は、仰る通り管理組合にあるの
      ですが、国交省もコロナを理由にした入室拒否には、特例措置を取らざる得ないという考えのようです。
      委託料の細分化した内訳の作成は、今後必要かも知れませんね。元来、委託料を返金するケースは
      委託内容をきっちり実施していない時に発生するのであり、それを想定すること自体、間違っているという
      感じがありました。実際には、そのような管理会社は多々あるのですがね(ご存知のように、、、💦)。

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