週刊ダイヤモンド9月11日号に「悪徳火災保険コンサルタントにご用心!」という記事が出ていた。不正な保険金請求を指南したり代行したりするコンサルが存在しており、社会問題となっているとの記事だ。同記事を読むと、対象は主に戸建てだと思われるが、
マンション管理業界に長くいると、これに似たような保険コンサルには何度か会ったことがある。
同記事では、発生していない被害を演出したり、小さい被害を拡大させたりと手口はひどく、私もそこまでのコンサルには出会ったことがない。しかし、保険に詳しくない管理組合に保険が適用できるように指南して手数料をかせぐコンサルには何度か会ったことがある。この人たちは、実際の被害を見つけ出し、保険適用になった場合に手数料をもらうという方法だった。手数料が結構高く、手数料を差し引くと、被害箇所が保険金額では修繕できなくなるほとだったので、実際には商売をしたことはないが、実は、彼らの話を聞いていて、なるほどと思ったこともある。
とくに地震保険などのノウハウなどは、本当に詳しく、管理組合や管理会社の知らないこともたくさんあった。
週刊ダイヤモンド誌の記事に出てくるコンサルは、明らかな悪徳保険コンサルだが、私は、今の保険業界の中では、保険を指南するコンサルがいることは必要悪のような気もしていたのだ。私自身も保険代理店の資格を有しているが、あくまでマンション管理士としてのコンサル業なので保険代理店は開業していない。しかし、管理組合を顧客としている以上、保険の相談も実際にはよくある話だ。
多くの管理組合とお付き合いをしてきたが、保険については、それほど詳しい管理組合はない。毎年、輪番表で理事が交代するような管理組合が多く、管理組合が保険に加入していることくらいしかボンヤリと頭に入っておらず、事故があった時に、私のようなコンサルや管理会社が保険の申請をすすめる程度だと思う。また管理会社のフロント担当者でも、あまり保険に詳しくないと、申請できるような事件も見過ごしてしまう。
私は、保険コンサルのような仕事が最低限生まれてくるのは仕方ないという物言いをしたが、実は、この業界には、そのような隙間が、まだまだあると思っているからだ。マンションに特化して話をすると、多くの管理組合がマンション火災保険(損害保険も含めて)に加入しているが、管理会社と委託契約をしている管理組合では、管理会社そのものを保険代理店として保険に加入していることがほとんどだ。そのため管理会社がのりあっている保険会社しか推薦しないし、実際にはフロント担当者が見積もりを理事会に持参して、実質は理事会にて決定する。多くの場合、団体割引をうけるため5年前納にしている。そのため、実際に保険の切り替えは5年ごとで、保険の切り替えに出会わない理事がほとんどだ。まあ、最近は料率が上がる前に、満期前に掛け替えをすることもありますが。
正直にいうとフロント担当者も社内で提示された保険見積書を持参するだけで、実際の適用内容や申請、鑑定などについて詳細には知らない。ためしに、ご自分のマンションのフロント担当者に「地震保険はどのような場合に適用になるのか。一部損壊とは、どのような損壊を言うのか」と質問してもらいたい。ほとんどのフロント担当者は、正確には回答できないと思う。
つまり、実際に震度5の地震が起こっても、見た目の被害が少なければ、保険が適用されるような被害かどうかわからないままだ。保険会社が親切に調べに来るわけではないから。
そのような時に、保険コンサルが調査に入り、保険適用されると管理組合に言ったら、コンサルに手数料を払っても保険申請してみようという管理組合があってもおかしくないと思っていた。私は、自分がお世話になっている管理組合が保険を申請する場合は、必ず相談にのっており、取得した見積書にも目を通している。
保険会社は申請された内容を必ず鑑定事務所に再調査を依頼する。鑑定人が保険認定かどうか。保険金額を決定する。彼らには彼らの考え方があり、そのうえで判断する。一般の人には、鑑定会社や保険会社の内規やルール、マニュアルは表に出ない。だから、想像以上に保険金が出たり、出なかったりするのだ。要するに、管理組合は必要な修復ができればよいので、それに見合った見積書を提出するべきだ。
週刊ダイヤモンドの記事によると、登場するのは最初から相当悪徳なコンサルだ。マンションにおいては、そこまで悪質なコンサルが入り込む余地は少ないと思うが、同時に、保険をすすめる保険会社や代理店も、もっときっちりと保険の内容について説明すべきだ。当然、保険契約をする前には、法律に決まった重要事項説明を行っているが、やはり営業行為でもあるし、それほど詳しい説明をしているとは思えない。どのような場合に保険が適用されるか等、より詳細にお客様に説明し、自分たちで判断できる知識を身に着けていれば、わざわざ手数料を払ってまで保険申請する人もいなくなるだろう。
マンションにも機能不全のような管理組合もある。記事のような悪徳なコンサルがマンション業界に入り込まないことを願う。
管理会社も保険代理店であるということ。保険代理店である限り、営業上の損害率というものがあるということも管理組合は知っておくべきであると思う。