チラシの投函などについてー政治ビラの配布を違法とした例(2)

前回ブログで、マンションのポストに投函した政治ビラが住居侵入罪(刑法130条)となった、という話題をとりあげた。その続きです。

この判決(東京高裁)は、ビラを商業的な広告に限定して解釈する必要はなく、マンションに住んでいる住民たちが、自分たちの生活圏における治安や防犯上の安心を得たいという権利。つまりビラの内容ではなく、共用部への立ち入りを住居侵入とみなすことができるという判断である。つまりエントランスの掲示や立て看板(チラシ投函禁止)によって、内容を問わずビラ配布を一律に禁止するという管理組合の合意(決議ー理事会でもよい)が成立していることも前提と考えられていると思われる。
(※上記考えは新日本法規出版の問答式マンションの法律実務の引用1620-2)

 オートロックのあるマンションでは、訪問販売が館内に入って営業するということも、そう多くはないと思うが、一度入館してしまうと、結構、マンション内を回って営業するような業者もいる。中には「管理会社や管理者の承諾をとっている」なんて平気で言う業者もいますから。
 そういった行為が違法性があるということを自信をもって対処してもらいたいと思う。また同時に全居住者に知識を入れておくことは管理組合の業務かもしれない。

 さて前回のブログでも少し触れた政治ビラの配布も住居侵入にあたるという話題に戻る。政治ビラを配布するどころか、(もうかなり前だが)マンション館内を一軒一軒訪ね歩いたある政党の議員候補者がいた。本当に大丈夫かな、この人、って思いましたよ。
 それはさておき、政治ビラの問題。この問題を考えるにあたっては、ひとつは分譲マンションの共用部が住居に該当するかどうかを考えなくてはならない。住居部分ではないとしたら、住居侵入罪が該当しないから。そしてもうひとつは、「ビラ投函禁止」という管理組合の方針が表現の自由を侵害しないかという問題。

 まず結論から言うと、両者ともに問題なしと高裁は判決をだしている。
 まず共用部がなぜ住居と判断されるかというと、専有部に付随しているから。管理組合は専有部に付随する共用部を生活圏と考え、住民が平穏に生活できるよう配慮しなければならないと考えられます。それは共用部の管理の本質です。
 そして政治ビラの投函禁止が表現の自由(憲法21条)を侵害しないかどうかという問題。政治的な主張は自由だが、それはビラの配布方法だけにたよらずいろんな手段があるということ。ビラの配布という手段が他人の財産権や管理権等を害することは当然許されないし、公共の福祉の観点から考えて合理的な制限は是認されると考える( ※上記考えは新日本法規出版の問答式マンションの法律実務の引用ー1620-3) 。

 とにかく部外者が勝手にマンションに入ることは、住居侵入罪になる可能性があるということを知っておきましょう。上記の判決では、各住戸の玄関ドアポストに投函するような方法でなくても情報の伝達は可能であり、違法性を欠くものではないとして、行為者に対して罰金5万円の有罪判決を下している。

 

 

 

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