当事務所はマンション管理士事務所なのだが、一部、点検業務等も請け負います。
マンション管理士って、コンサルタント業なんだけど、同時に現場の実務も行います。現場を知ってこそのコンサルタントだと思っているので。
コロナ禍において、専有部に立ち入ることが困難となり、消防設備点検や雑排水管の清掃などが、多くのマンションで延期になったりしていました。その中でも雑排水管の清掃は法令点検ではないため、とくに管理組合から延期の申し出を受けることが多くなっていました。
雑排水管の清掃は、一般的には高圧洗浄車をマンション敷地内に置き、そこから各戸に高圧ホースをひき、排水管(キッチン、洗面所、バスルーム、洗濯機置場等)の排水溝と排水管を高圧にて洗浄するという点検。点検というより清掃といったほうがよい。
雑排水管の清掃を実施することで、排水管の劣化を延命できるとされている。また実際に、どこかのお宅で詰まりが発生した場合、同系統の排水管で排水ができなくなり、いずれは上階にて排水があふれることになる。実施業者によっては、1年間の詰まり保証を提示していることもある。
(※つまり保証とは、雑排水管清掃を実施したお宅では1年間の保証をつけるというもの。高圧洗浄を実施したお宅にて1年以内の詰まりには無償で対応するというもの)
この雑排水管の高圧洗浄は、下階から実施していくことで効果がある。下階の詰まりから流し込んでいくことで、詰まりを無くすということですね。
コロナ禍で入室を断られることが多く、今回、高圧洗浄を実施したマンションでは、清掃を実施した場合にいただく、「済」の押印も実施せず、業者側にて実施宅を確認していった。
昨年の実施は70%だったマンションが90%以上の実施率だった。少しずつコロナ禍での対応にも慣れてきた結果かも知れない。
雑排水管の清掃は、排水管の延命措置を施し、同時に漏水等のトラブルを回避するため、ぜひ実施してほしい。しかし、同時に、永遠と実施が可能な業務でもない。排水管の素材にもよるが、いずれは劣化していく。
築40年を経過したマンションでは、鉄の排水管が劣化し、管内に錆こぶが生まれ、下手に高圧洗浄を行うと、管自体を破損して、漏水の原因となるため、清掃業者は実施を躊躇する。
築40年のマンションにて排水管の高圧洗浄を実施して、途中で排水管が破裂。管理組合と実施業者の間で、補償の問題が発生する。そのため、毎年、雑排水管の清掃を実施し、延命措置をとりながら、築20年~30年くらいで、排水管の延命工事を実施したほうがよいと思う。早い段階であれば、ライニング鋼管と呼ばれる手法がとられることが多い。その時期をのがせば、あとは排水管の交換しかないが、これは一大事業である。
もちろん配管は、排水管以外にも給水管、汚水管もある。ディスポーザを設置しているマンションでは、専用の排水管を設置しているケースも多い。
つまり、すべての配管が寿命をむかえることとなる。これらを取り換えるのか、何らかの延命措置をとるのか。またマンション自体が建替えとなるのか。
マンションはいずれ、この躯体自体と設備の寿命という問題に立ち向かわなくてはならないと思う。マンションって、人間といっしょなんだろうな、と思う。