前回ブログで、漏水は絶対に放置しないほうが得。という内容で書きました。
もちろん管理組合が対応する場合、漏水を放置するような管理組合はないでしょう。
私の経験では、放置ではないけれど、なかなか調査に入れなくて、数日被害を拡大させてしまったことがあります。原因は専有部の配管でしたが、居住者が、ご自分の専有部に我々を室内に入れてもらえなかった。今思うと、こちらの言い方も悪かったのかなと、、、。「間違いなく、お宅の専有部の配管だと思う」という言い方に気分を害されたようで、「証拠を見せろと」なって。「室内に入れていただかないと証拠も見せれない」との押問答で。結局は、被害宅とともに頼み込んで、2日後に調査に入りました。ただ原因は給水管でしたので、玄関口の止水バルブは閉めさせてもらいました。そうすれば、漏水は止まりましたので。ご自分宅も止水バルブが閉まっていると生活には不便ですから、最後は調査に納得してもらいました。止水バルブを閉めることには反対しなかったので、じつは協力姿勢はあったということだと思いますが、、、。
上記のように、漏水が放置される原因は多々あると思いますが、これから紹介するケースは東京地裁判例(令和2年2月7日)から(マンション管理センター通信2021年7月号より)。
マンション最上階の賃貸物件(オーナーが原告)で屋上部分の瑕疵により漏水。被告である本件の管理組合が防水工事をしたが、漏水が改善されなかった。その間、原告側の賃貸借契約が解除され、その後も賃借人がつかずに被った被害を主張した事件です。
判決を先に言うと、原告が被った「賃借人の転居費用や2度の更新料も含めた損害及び遅延損害金」380万円あまりを一部認容した。
裁判所は以下の点を指摘している
①漏水工事に改善が見られない
②漏水事故が屋上部分の瑕疵に起因していないことの証明がなされていない
上記2点が損害額を任用した理由となっています。
上記理由を見ても、漏水は共用部だと推測しており、それを否定できないこと。共用部は管理組合が改善措置をとらなければならないことが分かります。
この例を見ても、管理組合は、漏水対応工事を実施はしています。それでも漏水が止まらなかった理由は明確ではありませんが、ある程度は、浸水箇所を特定したうえで防水工事を実施したはずです。どのような調査で、どの程度の推測で工事を実施したかは分かりません。止水できなかったということは原因の特定はできなかったのかも知れませんね。
また本件の特徴は、判決の根拠となったのが民法717条だということです。
同条1項では「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」とあり、同条文を根拠に管理組合の不法行為責任を認めたものです。
マンションの管理では、区分所有法や管理規約が絶対的なルールとして名前があがりますが、当然民法が適用されることもあります。
とくに上記事件については、賃貸住戸であるため賃借人への和解金や賃料収入など収益相当額の損害が生じるので大変です。