すべてのマンションではないけれども、ある程度の築年数が経過したマンションの貸借対照表を見ていると「電話加入権」という科目がある。資産項目(いわゆる貸借対照表ーBS-の左側)で「電話加入権 70,000円」というように書かれています。
これは、マンションでお金に困ったら、管理組合が「電話加入権」を売却するれば、70,000円で売れる、という意味にとってしまいます(私など簿記が素人なので、、、。)
でも、皆さんよくご存じですよね。今、電話加入権なんか70,000円で売れないですよね。つまり実際には価値は0円。つまり電話は資産であるけれども価値は0円だということだと判断しています。
マンション管理士という仕事をしていて、何度かこの問題にぶつかっています。(もちろん、管理会社在籍当時にもこの問題はあった)。
最近、あるマンションで、この70,000円(実際には70,000円ではないです)を0円としました。つまり収支でマイナス計上(つまり支出としてとらえて)して、貸借対照表の電話加入権を0円としました。つまり来期からは表示しないということです。
上記の手法は、私が推奨して管理組合が承認して総会に上程しました。管理会社にも協力してもらい収支と貸借を作成してもらいました。
この方法を考えた時に、同時にこれは損金にならないかどうか、ということを考えました。
つまりマンションの収支においては、基本的には損金という方法はかなりタブーです(禁じ手とでも申しましょうか)。
だれかが管理費等を滞納した。その回収がとても困難であるので、総会に上程して損金とする。このように書くと簡単にできそうですが、じつはこれはできません。なぜなら、管理費等の滞納は全区分所有者の債権であり、管理規約上も総会の議案として上程できないと思われます。つまり損金などということを規約上決議できない。だから上程しても普通決議(有効議決権の過半数で承認)か特別決議(区分所有者の数と議決権数の4分の3以上で承認)かもわからない。もちろん建替決議でもないので5分の4以上でも可決できない。つまり規約上、決めれない事項なのです。ならば、どうするか。区分所有法は民法の特別法であるため、民法の債権の考え方に戻すしかない。つまり100名の区分所有者がいたら、100名全員の一人一人の債権であるため100名が損金に賛成して一筆差し出すしか方法がないわけです。
それでは、電話加入権の消滅は債権の放棄(つまり損金とする)とならないか。私はならないと判断しています。なぜなら管理費等は一度発生したらその価値は動かない。けれども電話加入権は価値が動く。ある意味、コピー機を購入して毎年価値を減価償却させているようなもの。
電話加入権という考え方は今はありません。もちろん電話の権利は名義変更等はできますよ、今でも。両親が亡くなったので息子の名義にするとか。
結局、電話加入権70,000円というのを、いつまでも貸借対照表に表示しておく考え方って、簿価をそのまま表示しているようなもの。いわゆる簿価計上しているにすぎない。法人税法上は電話加入権は消滅させることはできないと思いますが、それは簿価計上しているからで、これを時価計上すればよいと思います。
つまりマンションの電話は、時価計上していると考えて購入後は0円と考えればよいと思います。
マンションの管理組合でノートパソコンを購入したマンションがありました。でもこれは経費として計上しているだけで、減価償却しているマンションは無いと思います。マンションの電話加入権って、これと同じだと判断しています。