管理費等滞納 競売決議について

 管理費等の交渉を行っているうちに、あっさり民売をして、新しい所有者が滞納している管理費を支払い、問題が解決する、というケースが結構ありました。さみしい話ですが、なんか、あっさりした感じを受けたものです。
 管理費等の滞納において、管理組合が判断する最も重い判断(法的措置)は、競売決議でしょう。管理組合が総会で競売を決議するまでに、相当の交渉過程があったと思います。
 私は、マンション管理業界に20年ほどいて、競売決議の経験は1回だけです。他の管理会社の社員さんはどうでしょうか。まして顧問契約をなさっている他のマンション管理士さんなんかも、それほど多くは経験していないような気がします。

 競売決議はマンション標準管理規約第47条3項に明記されており、それは区分所有法第59条(区分所有権の競売請求)の訴えの提起は、特別決議(組合員の総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上)で決することとなります。
 この競売決議は管理組合の「伝家の宝刀」みたいなものですから、なかなか、そこまでは行いません。そこにいくまでに、双方(滞納者と管理組合)話し合い、分割案の締結や、即決和解、民事調停、支払い督促、少額訴訟、通常訴訟(債権の確定ー分割案の提起)など、管理組合の負担も少ない方法があります。

 先に述べた、私のたった1回の競売決議も、まずは話し合い(何年も)、分割案(守られず)、通常訴訟(守られず)という経緯を踏まえての結果でした。裁判所もいきなりの競売決議は、なかなか認めないと言われています。競売は相手方の区分所有権を力ずくで奪うわけですから、たしかに慎重ですよね。上記の競売決議は、相手方(滞納者)が、最後まで1円も払わず、これといった抗弁もせず、裁判上の審議においても滞納者から証拠も提出されず、もう投げやりな感じでした。
 私は、これまで競売決議の一歩手前までの経験は多々あるのですが、そこまで来ると、多くの方は、部屋を売買してしまいます。競売決議になって、安い価格で売り買いされるなら、民売で少しでも高い売値で売ったほうが、少しでも得なわけですから。
 件の競売対象者の方が、なぜ最後まで民売をしなかったのか、いまだにわかりません。また裁判の審理中も裁判官から「弁護士をつけないのですか?」と質問されていましたが、まったく返事もしませんでした。本当にお金がない状態だったのでしょうけれど、それにしても、投げやりな感じがしました。

 管理組合で競売請求をしなくても、競売になってしまうケースも多々あります。むしろマンション管理の現場では、こちらのほうが多いのではないでしょうか。あるマンションの理事さんたちは、「あの方は絶対にローンも払っていないから、すぐにローン会社から競売がかかるよ」と言われることが多く、本当にそうなることが多いのです。この場合は、通知があったらすぐに、管理会社と協力して(自主管理の場合は、管理組合にて)滞納している管理費等の一覧表(請求履歴や遅延損害金等)を裁判所に提出しなければいけません。

 競売のあとは、専門業者が落札することがほとんどです。購入後、新たに転売するのが普通です。管理費等の滞納については、この専門業者と管理組合は交渉することになります。彼ら(専門業者ー競売業者ー多くが宅建業者)は、慣れていますので、払わなくてもよいものについては、交渉してきます。遅延損害金や駐車場使用料等は、請求しても払わないですね(管理組合と良好な関係を維持するために、払ってくださる業者もいます)。この交渉は、多くの場合、管理組合は負けますので、遅延損害金や駐車場使用料は、元の使用者と早い段階でけりをつけておくことが望ましいです。たとえば遅延損害金は、すでに払った管理費等を先に遅延損害金に充当しておくとか、駐車場使用料金は、2~3か月滞納したら、使用禁止にして、解約するとかの手段をとっておくべきでしょう。

 
 
 

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