無人マンションって

 マンション管理新聞(4月25日発行)に「熊本で無人マンション」という記事が出ていました。熊本市中央区のあるマンション(築42年)が無人の状態となっているとの報道です。無人マンションといえば、滋賀県野洲市の無人マンションが有名で、マンション関係の雑誌や書籍によく引用されました。この熊本県のマンションも野洲市と同じような状況で、持ち主がだれも住んでいない状況だとのことです。
 マンションという建物が現在のように日本中に建てられ始めたのは戦後のことで、これらのマンションがいずれ、どのような道をたどるのかは、まだ日本には前例がないのです。
 バブル期のリゾートマンションなどが、無人化したり、5万円ほどで売りに出されるような状況が現出しているのは、皆様ご存知のことだと思います。建物というのは、やはり維持管理をしっかり行わないと、あっという間に廃墟になるし、その前に、そこに住んでいる人がいなくなると誰も維持管理を行えません。
 私の仕事上の経験では、やはりリゾートマンションで管理費等の滞納が増加し、建物の維持管理が機能不全となりました。そこはまだ住んでいる方もいて、なんとか立て直そうと皆様努力して、なんとか現在、管理を維持されていますが、所有者行方不明のような部屋もあり、そこを所有者不明の状態で弁護士さんに依頼して競売にかける手続き等を行い、とても大変でした。リゾートマンションで温泉が出るというのが売り出しの目玉でしたが、あっという間に配管等が硫黄成分でやられてしまい、温泉施設をとりつぶし、集会所と懇談部屋にしました。
 上記の熊本県のマンションでは、建築基準法に基づく指導、空家対策特別措置法に基づく特定空家等には至っていないとのことですが、熊本市担当課の説明では、「管理組合」が存在しているのかどうかは確認できていないとしています。
 現在、国や地方公共団体でも、機能不全マンションの割り出しに、乗り出しましたが、実態はまだつかめていない状況です。機能不全マンションという言葉は、最近頻繁に使われだしましたが、要するに、管理組合が健全に機能していないマンションという意味です。
 私のようなマンション管理士という肩書の仕事は、管理組合を通じての発注がほとんど(私の場合は90%以上)でしょうから、このような機能不全マンションに係わることは、これまであまりありませんでしたが、少しずつ行政からの相談もあり、このような方面の仕事が生まれてきました。機能不全というのは、決してうれしくない状況ですから、そこに仕事が発生することは、社会的にみて喜ばしいことではありません。やはり、普段から管理組合の活動を充実させる中での相談やコンサル、第三者管理の仕事が楽しいと感じます。

 前述の熊本市のマンションでは、現状では建物がすぐ倒れるという状況ではないため、当面は、熊本市は所有者を確認して対応してもらう予定、と話しています。
 もしマンションが特定空家等に指定され、同時に建物の倒壊の可能性や部材等の散乱が見られると、取り壊しも検討されます。実際には行政代執行(行政が解体する)となることもあり、その法的方法は略式とそうではない方法があり、所有者に処分代を負担してもらうケースと行政が立て替えるケースがあります。
 そうなってしまうと、そのマンションは社会的にみて単なる負の遺産となってしまいますので、そうなる前にオーナーは維持修繕や建て替えを管理組合として判断しなければなりません。

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