管理員さんの仕事って

　マンションの管理員さんと清掃員さん。両者の仕事は、居住者のもっとも目につきやすい業務です。この出来栄え次第で、管理会社の評価も左右します。
　私は長い間、マンションの管理員をしていました。その後、フロント業務となり、現在、マンション管理士事務所として独立しました。その経験から言うと、管理員さんに多くの仕事を期待するのは酷だと思います。多くの管理会社とつきあっていますが、管理員さんの研修が完璧だという会社はみたことがありません。管理員さんの良しあしは、あくまで、その方の個性と勉強量です。
　多くの場合、管理会社に管理員として雇用され（ほとんどアルバイト待遇）、現場に張り付かされます。いろんな現場を見ていると、管理員の仕事として、きっちりマニュアルがあり、つねに研修等でスキルを上げていくようなシステムを持っている管理会社には出会ったことがありません。
　私は大きな問題は、フロント担当者が、実際に管理員経験者がほとんどいないということだと思います。フロント担当者で、朝一にマンションに来て、全館を巡回して、清掃を行った経験者なんて、ほとんどいないです。フロント担当者は、実際にモップを使って、長い廊下を何時間もかけて清掃した経験者なんていないです。だから管理員の苦労は分からないです。あとは共感能力があれば、その仕事の大変さを察知して、管理員さんの悩みを聞き、対応しなければいけないのですが、そのようなフロント担当者は、非常に少ない。
　もちろんフロントにはフロントとしての膨大な仕事があります。その中に、管理員さんとの接触や情報共有は、ほとんど入っていない。管理員さんの毎日の日報を、事細かく読んで、分析しているフロント担当者はいるのでしょうか。自分の担当物件が10件あれば、毎日10件の日報があがってくるわけで、それに目を通して、対応策を考えていると一日たってしまいますよね。
　管理業務主任者という資格があります。これは国家資格で、マンションフロント業務を行うためには必須の資格です。これが無くても仕事はできますが、やはり重要事項説明という管理組合との契約説明ができないので、多くのフロントは、まずこの資格を取得しようとかんばります。この資格を取得してから、マンション管理会社への就活を始める方も多い。私は、この資格をとってから、マンションの管理員になりました。だから、ある程度のことは、耳学問としてもっていたので、なんとか仕事がこなせたと思います。
　多くの管理会社の管理員さんの仕事って、同資格を必要とするくらい、じつは複雑で多岐にわたっています。でも管理業務主任者という資格をもっている管理員さんって少ないですよね。それがあれば、管理会社に正社員として本社勤めしますから。
　一方で、マンションの管理組合のほうは、管理員さんは、管理会社の窓口として、大きな期待を寄せます。しっかりした管理会社は、管理員さんの仕事の内容を事細かく、管理組合に説明しています。どのような仕事を、どのようにこなすのか。ある程度以上はフロント業務であり、管理員さんの仕事ではないのか等。
　管理会社フロントは繁忙すぎるため、多くを管理員さんに頼ります。管理組合も管理員さんに期待するため、管理員さんの不満がたまります。管理組合からのクレームを本社にあげても、まったく対応してくれない、クレームを受けて謝るばかりだ、という管理員さんも多い。もちろん、本社と関係がスムーズで良好なケースもあります。でも、それって、管理員さんの能力にたよっているケースがままあります。
　一度、自分のマンションの管理員さんに、どのようなマニュアルになっているのか、確認してみることが必要だと思います。
　管理員さんとは名ばかりで、清掃だけで、手一杯という管理員さんもいます。中には、私は管理員だから清掃は一切しないと、目の前に落ちているゴミさえ拾わない方だって、多くはないですが、いらっしゃいます。でもそれは契約社会から見たら、じつは普通のことで、管理員としての業務でないことをやる必要はないからです。