マンションの居住者名簿(住民名簿ともいう)というと、そこには何が明記されているのでしょう。マンションの各部屋に住んでいる人、もしくは部屋の持ち主。その両方かも。これって多分正解は無いでしょう。一般的には、住民名簿は住んでいる人。オーナー名簿と言った場合は、区分所有者名簿のことを指します。
管理組合が管理組合運営を行うに当たっては、この両名簿はとても大事です。ただ扱いも要注意です。管理組合も個人情報の保持団体とみなされ、個人情報の扱いには法律上の義務が課されます。
実際に住んでいる人との連絡網がないとトラブルに対応できません。またオーナーの連絡先も必ず必要です。1つのデータに賃借人とオーナーの連絡先等が明記されているとありがたいですね。
さて個人情報にあたるこの名簿。普段はだれが管理していますか。管理会社と委託契約を結んでいるマンションであれば、管理会社にまかせていると思います。しかし、たまに管理組合も管理会社も知らないうちに賃借人が変わっているようなケースもあり、実際の居住者がだれであるかは、管理組合、管理会社ともにつかんでおくべきだと考えます。
この住民名簿・オーナー名簿がとても大切になってくるときは、総会の案内を出すときなどです。オーナーの住所に総会資料等を郵送して、委任状や議決権行使書を返送してもらわなくてはなりません。
過去にこの名簿の取得でとても苦労した経験があります。取得というのはどういう意味かというと、管理組合が管理会社から名簿をみせてほしいと頼んだ場合です。普段は管理会社が管理していますから。
普段は総会の資料発送も管理会社が行ってくれることが一般的。だから管理会社が名簿を管理し内容を把握しておけばよいと考えていますが、それだけでは困ることがあります。
例えば管理会社を変更する場合です。管理会社を変更することを議案として総会に上程するために総会資料をオーナーに配布しようとしたときに、管理会社がそれを拒否しました。つまり個人情報を管理組合に開示しないと言ったのです。
自分たち(管理会社)が解約される可能性のある総会などを開催できないようにする最終手段です。オーナー名簿がないと管理組合は自分たちの力で総会の開催通知さえ郵送することができません。
この時に管理組合は、「オーナー名簿は本来管理組合の所有物であり、管理会社はそれを管理組合から預かって保管しているだけだ。早く私たちの資産を返還しなさい」と主張しましたが、管理会社の回答は次のようなものでした。「オーナー名簿は管理組合のものではなくて管理会社のものである。オーナーは所有状況を管理会社あてに提出している。つまり管理会社を信用して個人情報を預けているので、それを開示することはできない」。との立場を崩しませんでした。
結局は、なんとかオーナーの所在地を管理組合で探し出し自分たちでオーナー名簿を再作成しました。
同件を関係機関に問い合わせをしましたが、回答は管理会社と同じものでした。この時に、私は初めてオーナー名簿が管理組合のものでないことを知りました。
その後も、多くのマンションで管理会社の変更をサポートしたり、立ち会ったりしましたが、ほとんどの管理会社はオーナー名簿を提出します。また同名簿が、自分たち管理会社のものだという意識もありませんでした。ただ、ひとたび前述のような事実を知れば、管理会社も今後、態度を変えるかも知れません。このことを多くの管理会社フロントに話したことがありますが、「そんな場合でも、当社は情報を開示しますよ。管理組合と喧嘩してまで、抵抗したくありません」という管理会社がほとんどでした。
普段の管理上の問題から、つねに最新の名簿を管理会社と共有しておくことが最善でしょうね。