コロナ禍における管理会社返金

  実施しなかった設備点検費用等の返金

日本中がコロナ禍におそわれ、マンション管理の現場にも大きな変化が見られた。
本来的に考えて見ると、密になることを避けなければならない状況下での管理組合運営というものを誰も考えなかった。つまり区分所有法も標準管理規約もマンション管理適正化法にしたって同じことだ。むしろマンション管理は、つねにコミュニティというものを大切にして、意思疎通の風通しをよくして運営されていくものだという前提があったと思う。
 さて管理の話だが、1年を通じて、何度か専有部分に立ち入る機器点検や清掃というものがある。とくに消防法に定められた消防設備の点検は年1回の機器点検と年1回の総合点検、合計の2回実施する。またこれは法令点検ではないが、雑排水管の高圧洗浄を組合にて行っているところも多い。上記に述べた、この合計3回だけでも専有部に専門業者が立ち入ることになる。
 昨年来、コロナ禍で、同点検を実施しなかったマンションも少なからずあろうと思われる。また消防設備点検などは、専有部を飛ばして、共用部だけを実施したマンションもあるだろう。
 多くの場合、管理会社に上記の点検を委託している管理組合が多かろう。実際には管理会社が元請けとなり下請け業者にアウトソーシングするのだが、これらの点検は基幹事務以外の業務と呼ばれ、アウトソーシングすることは法律的にも認められているし、とくに消防設備点検は消防設備士という有資格者でなければ実施点検できない。
 これらの点検は、管理会社の通例の委託契約として年間委託料として見積もられ、重要事項説明を経て、総会にて来期の委託契約の内容として承認される。委託契約料は月ごとに管理組合が管理会社に支払うものだが、一般的には、これは総額を12か月均等割にして支払う(通常は引落)。通常であれば、これで問題はない。しかし、昨年来、本来の共用部点検を実施しなかったマンションもある。そうすると、本来の委託契約料に含まれている点検実施費用を未実施のため返金しなければならない、という事態が多く発生している。普通は契約書の内訳として、「●●点検 年額●●●円」と書かれているので、それを返金すればよい。しかし、一部だけ(例ー共用部だけ)実施したような場合、返金額はいくらになるのだろう。それは決まっていなことが多い。なぜなら、委託契約の内訳では、点検総額のみを見積書として提出していることが多いので、細部にまで内訳として出していない。下請け業者も管理会社に対して、詳細な見積書内訳を提出していないことが多い。通常は、点検機器の数と部屋数を掛け合わせ概算で出す。結局、返金額が決まらないのである。
 ある管理会社は、委託契約の費用支払いを12か月均等割にせず、事務管理費用は12か月均等割として、躯体や機器点検等はオプションのように、実施した分を支払うという方法をとっている。この場合、毎月、請求額が変わるので、それはそれで会計報告書が見にくい(まあ、慣れれば問題ないですが…。)。
 これを機会に、管理会社の委託契約の内訳を精査してみるのもよいかも知れない。よく管理会社は、管理組合に言い値で出している、と言われるが、私はそれほど、管理会社もぼろもうけしているとは思えないです。もちろん大手と中小独立系管理会社とは、そこそこの開きはあるが、大手管理会社も、最近はかなり粗利を落としてきている。
 委託契約の内訳をよく精査することは、自主管理をした場合や、点検業務を管理組合より直接に業者に発注するような場合に役立つかも知れない。
 管理会社からの返金については、返金額もそうだが、まずは返金すべきと考える管理会社とお付き合いをすることをおすすめする。
 そんなことに気が付かない管理組合や管理会社もあるようだから。

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