管理計画認定制度において認定を受けたマンションはまだ100あるかないか。もちろん申請したが認定されなかったマンションがどれほどあるのか分からない。
私の印象では、認定を受けるのはなかなか難しい。認定を受けるための要件はいろいろあるのだが、その中でも、意外に要件に適わないのが「居住者名簿」だ。区分所有者(組合員)名簿と居住者名簿は違う。前者はオーナー名簿(管理費等の引落や連絡先に管理会社が利用することが多い)。後者はマンションに実際に居住(賃貸者含む)している方々の名簿、これは緊急事態等に利用すること等を目的としている名簿である。
管理計画認定制度においては、上記2種の名簿を管理組合が独自に所有し、最低でも年に1回は更新しなければならない、ということが要件となっているのだ。
区分所有者名簿は多くの場合、管理会社が備えているが、その所有権は管理会社にあると判断されることが多い。組合員は管理会社の管理運営に資するために管理会社に個人情報を提供している。管理会社も、その情報は共用部の管理のために情報を利用しており、それ以外に使用することは無い、とするところが多い。
ある日、自分の個人情報を理事長Aが知っていたら、それは問題だと考える組合員も多いと思う。緊急時に、管理組合が管理会社に対して個人情報を提供するよう依頼することがあるが、管理会社は管理組合に提供することは少ない。
とくに居住者名簿となると、これを所持している管理会社は決して多くないし、それを管理組合(とくに理事会)が独自に調査して、毎年更新しているような組合は少ないと思う。また管理組合も個人情報の保管団体とみなされるため、その利用法には慎重を期する。
私自身も緊急時の対応に資するため、管理組合が独自に居住者の情報を保持するためのアンケート調査などに協力したこともある。また要介護情報などを集めているような管理組合もある。
しかし、組合独自で毎年それを更新して保持しているマンションとなると少ないのではないか。
また多くの管理会社と管理組合はマンション標準管理委託契約書に基づいた委託契約を締結していることが多い。同委託契約書の第16条には「(管理会社は)正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た(一部省略)組合員等の秘密を漏らしてはならない。この契約が終了した後においても、同様とする。」となっている。あるマンションの理事長が、ある個人宅の情報を管理会社から得ることは、この条文に違反する可能性が高いと思う。
今後は、マンション標準管理委託契約の雛形が変更となり「管理会社が知り得た名簿については、管理組合の依頼が有った場合は、提供する」というような条文が入るかも知れない。
一方で、それが嫌だという組合員もいるだろう。その場合は、このような条文を削って、委託契約を締結するということになるかも知れない。
まずは、現在の委託契約書の条文からでは、組合の個人情報を管理組合に提供するのは困難ではないかと思う。
つまり管理計画認定制度において認定を受けるためには、組合が独自に居住者名簿を作成し、同時にその運営に際しての細則を総会承認してもらうことが必要ではないかと思う。