フルメンテナンスとPOG どっちがお得
エレベータのメンテナンス契約にはフルメンテナンス契約とPOG契約の2種類がある。どっちが得かとよく聞かれる。もちろん回答はない。その時の状況による。つまり誰にも分からない。
ただ説明しておきたいことがある。
フルメンテナンスだと安全で、POGだと安全ではないとか、点検内容が違うということはない。
フルメンテナンスとは、多くの部品交換が無償となる契約だ。POGとは「パーツ、オイル、グリース」の略で、都度、部品交換に費用がかかる契約。それでは、どの程度のことがフルメンテナンス契約において無償なのか。じつは、これはあまり知られていない気がするが、ほとんどの部品交換は無償である。一般的には以下のように言われる。「フルメンテナンスは各階枠・扉、箱内意匠以外は無償」と考えてよい(かなりおおざっぱな言い方)。
実際のメンテナンスの内容は「昇降機の適切な維持管理に関する指針」というテキスト(日本建築設備・昇降機センター)に記載されている。
例えば、ロープ式エレベータの場合、ロープの交換は10年~15年くらいで行っていくことが多いが、これはフルメンテナンスであれば有償か無償か。ずばり無償である。メーカーやエレベータの種類、建物の状況(階数など)にもよる、7階建てエレベータのロープを交換すると1,000,000円くらいではないだろうか(もちろん業者さんによって違います)。でも費用がいくらでも、フルメンテナンスであれば、金額は気にすることはない。無償だから。
普段のメンテナンス費用(月額)は、フルメンテナンス契約(月額)であれば、POGの倍以上はする。
ここからは私の私感が強いが、築15年くらいまではPOGのほうが得。築15年以上経過してからフルメンテナンス契約の効果が出てくる。つまり新しいマンションのエレベータは故障が少ない。だからフルメンテナンス契約がいくら無償の部品交換ができるといっても、実際に部品交換のケースが少ない。つまりメーカー(または元請け業者)は、いただいた費用の多くを普段の点検費用に消費するだけで、あとは積立金のように貯蓄していくような感じとなる。築15年くらい経過すると、各所が不具合が出てくる。ロープ交換も行う。制御盤、電動機、巻き上げ機等々の不具合があらわれる。つまり、その時にはフルメンテンスだと、ほぼ無償で交換できる。つまり10年以上払ってきたフルメンテナンス費用が、ここに来て効いてくるのだ。
それでは、最初POG契約にしておき、築年数が経過してからフルメンテナンス契約に変更すればよいと考える。残念ながら、それはできない。できないというのは、POG契約からフルメンテナンス契約に変更してくれるメーカーは無い。
またメーカーのフルメンテナンス契約をやめて独立系のPOG契約に変更したとする。この場合、再再度のメーカー契約は不可能だ。当然、フルメンテナンス契約をする会社もない。
つまりメーカーは、築10年までフルメンテナンス契約をしてくれたら、そこでPOG契約に変更してくれたら、すごく得なのだ。逆にマンション側は、それが最も損だ。10年間、払ってきたフルメンテナンス代(つまり貯蓄のようなもの)が無駄になる。
エレベータを更新したら、そこでこれまでの契約は一旦、ご破算となり、新しい契約となる。エレベータ更新はメンテナンス業務ではないので、フルメンテナンスやPOGは当てはまらない。高い工事費用を支払う必要がある。
ここまで読んでいただいた方は、よくお分かりと思う。フルメンテナンス、POG、どちらが得かと言う答えはない。ただ言えることは、今のフルメンテナンス契約を変える必要はない。一度、変えたら2度とフルメンテナンス契約に変更できない(エレベータを新設するまで)。
また知っておいていただきたいことは、管理会社を変更した場合は、多くがPOG契約になる。例外としては、管理会社が変更となっても、同じメーカー(例 ○芝、日○ ○―チス等々)が点検を継続した場合は、フルメンテナンス契約が継続できることが多い。
前回、前々回のブログでは管理会社の変更について書いたが、共通仕様書のエレベータ点検の箇所を良くみてみよう。フル or POGかを見極めてください。マンション側がフルメンテナンス契約でお願いします。費用は出します。と言っても、「当社は受けれません」と言う場合も多い。