3月3日の朝日新聞にマンションの大規模修繕の周期が一般的な12年から18年になってきたというような記事が載っていた。何人かのマンション管理士や管理会社フロント、専門家とも話したが、新聞報道のように「普及し始めた」とまでは言えないよね、というのが狭い私の周りの感想(私も含めて)。
もちろん周期が伸びれば、管理組合は資金的にも助かるに違いない。
築60年で建物自体の維持管理延長か建替えを考える時期に、12年周期なら5回の修繕工事が、4回に減らせるというのがうたい文句だ。
大規模修繕の周期が10年~12年くらいというのは、同業界の一般的な考え方であり、国交省の長期修繕計画作成の考え方でもある。もちろん、私たち現場にいる者からしたら、管理組合が工事周期を伸ばせるだけ伸ばせればありがたいという声は、いつも聞いてきたことだ。しかし、実際には、マンションそれぞれの特性によって修繕周期とは違うもので、そのことは誰でも知っていると思う。私は、修繕12年サイクル説を、劣化診断の時期と取らえてコンサルしてきた。だから、日本中のマンションが、今後18年周期になるというわけではないし、さすが報道も、そこまでは書いていない。
現実に、建築士学会や専門家の間では、マンションの修繕周期は、一般的にもう少し長くてもよいのではないかとの意見はあった。
そこで必ず出てくる意見は、「建築会社や管理会社は、工事をやればもうかることから、修繕をすすめる。」というフレーズだが、私は、そこまでとは思っていない。私が接してきた多くの管理組合は、そんな言葉には乗っからないし、営繕部隊を持つ管理会社も、そこまで露骨な発言をしているのを、あまり(あくまで、あまり)見たことがない。
管理会社のフロントも、会社あってのサラリーマンですが、そこまでノルマを課している管理会社は少ないし、相当の営業力がないと、総会で上程案まで持って行けない。
だから12年が正しいと言っているわけではないです。今回の報道をよく読んでみると、某大手管理会社が、「16年に一回ですむ修繕サービスを始めた」というもの。どこにも18年と書いていない。よく読んでみても、そのような修繕技術が急激に進歩したというわけでもなさそう。そこで該当の某大手管理会社のサイトを見てみると、たしかに載っている。それをよく読んでみると18年間まで、なんとか伸ばしましょういう努力目標に見える。技術的なことでは無く、保証期間はそれで充分ではないか、という主張に見える。つまり保証期間を延ばすということだ。
例えば、塗装。塗装といっても、どの塗装かよくわからないのだが、仮にウレタン塗装としよう。屋上をウレタン塗装した場合、一般的にはメーカーから出る保証は5年。これを10年に延ばせるという話だ。
現実にはどうか。現状では、多くは10年持つと思いますよ、今でも。現状では、ある一定㎡の施工範囲があれば、ウレタン防水は、5年保証が一般的。5年経過したら、そこでいったん、トップコートを塗装して、もう5年保証を伸ばす。これが現状。つまり、今回の報道は、この5年経過時点でトップコートを塗装しないで、そのまま10年いけますよ、という話で、多くのマンションでは5年目のトップコートを忘れて、10年むかえる現状とあまり変わらない。
そして、気になるのが、塗装保証を10年にしても、残りの6年~8年はどうするのか不明。
さて、ここまで書いてきて、確認ですが、私は12年ごとに修繕をやれと言っているわけではないです。ただ、18年間、保証できるような技術が、これまでと同額で可能です、というわけでもないのに、そして実際に18年間の保証もつけないのに、マンションは18年ごとの修繕が本来の形ですよ、みたいな記事は、どうかなと、少し思います。