ポスティングのための建物立ち入りは法律違反を問えるだろうか

 オートロックのあるなしにかかわらず、多くのマンションでは1階エントランス近くに集合郵便ポストがある。郵便の配達等ではマンション敷地内に立ち入らないと郵便ポストに信書を投函することができない。また宅配ボックスのあるマンションでは、つねに宅配業者が出入りしている。オーロックのあるマンションでは、宅配業者さんは1階からインターホンで配達先を呼び出し、オートロックを開放してもらってから館内に入っている。オートロックがなければ、そのままマンション内に入って、エレベータもしくは階段を使って最上階まで荷物を届けてくれる。それを、住居侵入だという人は、いない。最新のマンション標準管理規約では「置き配」の規定も定めているため、当然、宅配業者さんが館内に入館することを前提としている。

 オートロックのないマンションで、館内に立ち入り、各戸の玄関扉ポストに政党関係のビラをポスティングした行為に対する判決がある(最高裁平成21年11月30日第二小法廷判決)。この裁判は一審から控訴審にいき、最後は最高裁が上告を棄却した。判旨を要約すると、住居侵入罪(刑法130条)が成立するというものだった。

 このようなトラブルを避けるために、多くのマンションでは、ビラやポスティングを禁止する旨の立て看板や掲示をエントランス付近にしているのが一般的だ。たぶんあなたのマンションも、これに似たような内容で掲示があるだろうと思う。これは、実はとても有効な証拠となる。刑法上、住居侵入罪の住居に、区分所有法上の共用部がカバーされているかどうかは不明だ。上記の裁判も最高裁の判旨でも、そこは不明確だ。

 同裁判の判旨では、管理組合が玄関ポストにビラを投函することを住民の意思統一として禁止していると外部に広報していることだ大事だ。つまり、上記のポスティングは、住民らの生活の平穏に配慮するべき管理空間への侵入であり、管理者(理事会や管理組合)の意思に反しているため違反であると判断しているのである。
 また政党のビラという内容から表現の自由も問題とされたが、今回のポスティングは表現の自由を制限するという問題ではなく、表現の手段を処罰することの憲法適合性を問題とした。

 本当は、1階の集合郵便ポストへのビラや広告の投函も、禁止するという貼り紙の内容の趣旨に反すると思うが、やはり館内への立ち入りとは、かなり重さが違うということらしい。

 

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