管理費等の「等」とは、一般的には修繕積立金を指す。この「等」に専用庭使用料や駐車場使用料などの使用料を含むという人もいる。しかし、マンション標準管理規約では「区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という)を管理組合に納入しなければならない。」とされ、続いて「一 管理費 二 修繕積立金」と明記されている。つまり管理費等とは、上記の一と二を指す(規約25条)。
そして、第60条には次のような定めがある。「管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から口座振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし」とある。上記の62条とは管理組合が開設する預金口座のことを指す。
さて、上記のことから、どのマンション管理組合でも、管理費等や使用料は、各自の口座から引き落とされるのが普通だ。たまに各自が振り込むという方法をとっているマンション管理組合もあるようだが、上記のような管理規約が定められている場合は、振り込みは規約違反となる。古いマンションで、管理規約に口座引落の規定がないマンションでは、直接徴収や、振込というケースもあるようだが、一般的にマンション標準管理規約を原則として管理規約を定めているところは、口座引落が一般的だ。
自主管理にしても、会計担当の理事や、管理会社と委託契約を締結しているマンション管理組合では、一括引落でないと、帳簿の整理や仕分け、会計報告の作成に手間取ってしまう。
また各自が振り込むと、振込料がかかるが、管理会社に委託すると、口座引き落とし料は、100円強くらいだ。また最近の管理会社は、多くの場合、管理会社指定のメインバンクに組合口座を変更することで、引落料がかからないというサービスを展開している。100世帯のマンションで、口座引落が1世帯100円かかっても月額10,000円。年間120,000円かかる。もちろん100円でも、各自が振り込む手数料より安い。しかし、これを管理会社に委託すると低額もしくは無料になる。管理会社に委託するメリットというのは意外にあるのだ。
管理会社と委託契約を締結すると、重要事項説明でも管理委託契約書でも、イ・ロ・ハという3通りの、どれかの収納方法となる(マンション適正化法施行規則87条2項1号)。じつは、この違いを理解している組合員は少ない。もちろん管理会社は重要事項説明時に、これを説明するのだが、実際に採用しない方式は、あまり詳細に説明しないのが一般的。このイ・ロ・ハという3通りの方式は平成22年の適正化法施行規則の改正によって分類された。それまでは原則方式、収納代行方式、支払い一任方式という3つの方式だった。私などはこの業界に入った頃は、この3つの方式の違いを勉強して資格試験に臨んだ。
現在、もっとも多い方式はイ方式だと思われる。これは収納口座と保管口座の2つの口座を開設し、管理費と修繕積立金を収納口座という同じ一つの口座で収納する、という方法。最初に一つの口座で収納し、後日、管理費と修繕積立金に振り替えていく方式だ。
私は、ロ方式を採用しているマンション管理組合に出会ったことがない。偶然なのか、やはり相当数、少ないということだろうと思う。これは管理費と修繕積立金をそれぞれ別の収納口座を開設するという方法なのだが、管理組合も管理会社も、そんなにたくさんの口座を管理したくないし面倒だ。決算時の残高証明書も2枚とらなくてはならない。そのためロ方式をとるマンション管理組合は少ない。というか、管理会社がこの方法をほとんど採用しないので、管理組合自身もこのロ方式を採用するという考えもないと思われる。
そして最後の3つ目の方式がハ方式だが、これは収納保管口座(管理組合名義)という1つの口座を開設し、帳簿上で、管理費と修繕積立金を収納管理するという方法だ。
最初に記したマンション標準管理規約の第60条では、イ方式をほぼ前提としているのではないかと推測している。
ここまでの財産の管理方法を一般的に、分別管理方法といったりする。ご自分のマンションの財産の分別管理方法がイロハのどれを選択しているかを知っている方は少ないかも知れない。
まあ、それを知らなくても、管理会社や会計担当理事がしっかりしていれば、何の問題も起こらないのだが。