地震保険の金額が高いか安いか、とよく聞かれる。要するに聞きたいことは、地震被害があった際に、保険金が降りるのかどうか。支給される可能性が少ない保険金は高いと感じるだろうし。支給されやすければ、価格も安く感じるというものだ。
保険は「出ますよ」とか「出ませんよ」などということはできない。マンション管理士が保険に関して、そのような発言をすることは禁じられている。しかし保険の概要については知っておかなくてはならない。最低限の基礎知識は必要だ。
地震保険は法律(地震保険に関する法律)に基づいた保険であり、政府と保険会社が共同運営していることは、あまり知られていない。つまり、どの保険会社でも補償の対象や損害区分は決まっている。対象は建物と家財であり、それぞれ全損、半損(大半損)、小半損、一部損の区分がある(2022年10月時点)。
さて、ここまでの説明は、保険代理店や管理会社などから聞く説明だと思う。問題はここからだ、実際に地震保険というのは適用になるケースが多いのかどうか。つまり一部損と言っても、どの程度が一部損か。そもそも、どの部位が、どの程度の被害で一部損なのか。そこまでを説明してくれる保険代理店や管理会社は少ない。管理会社の社員では、詳細には知らないというケースもあるだろう。
地震保険は主要構造物に被害があったときに、その割合によって適用されるということだ。主要構造物とは何か。マンションの場合、梁、柱、床。つまり建物を支えている構造部分だということ(これはラーメン構造の場合)。壁といってもすべての壁ではなく耐力壁ということだ。もしくは壁がすべての主要構造物というケースもある(これは壁式構造という場合)。それでは、主要構造物がどれほどの割合で被害にあった場合に適用されるのか。その割合の分母と分子。つまり分数(%)なのだが、これ以上は、このブログで書くわけにはいかない。
最近は、保険代理店ではなく、保険紹介業なる商売が横行し、金融庁から注意も出ている。保険の申請行為を代理して手続料(紹介料)を得るという商売だ。これは法律ぎりぎりである。保険代理店のみが本人の代理で保険申請行為を行うが、それ以外の者が代理することはできない。もちろん保険代理店は支給された保険金額から別途紹介料などを得ることもできないし、そのような保険代理店はない。しかし、上記のような紹介料をかせぐ保険紹介商売をしている人たちは、上記の方程式(分数割合)の分母と分子をよく知っている。これらは、もともと保険鑑定事務所などの内規資料だったものが、表に出てしまったことから始まったことだ。
震度5以上の地震などがあり、主要構造物などに被害があったのではないかと心配している管理組合は、地震保険を申請してみることは権利だと思う。地震保険に加入していないと、申請もできないのだから。地震保険で全損したマンションを建て替えることはできない。地震保険は当面の生活費だ。しかし、緊急時に総会にて修繕積立金を崩す手間もはかどらないし、合意形成も難しい。このような時は、地震保険が役に立つと思われる。
※過去の参考ブログ 地震保険について – マンション管理通信 (mori-manshon.tokyo)