管理のための新たな財産管理制度ー区分所有法変更検討

 令和4年6月に国交省から「区分所有法見直し検討案」が発表された。あくまで素案なのだが、かなり現実味を帯びてきた。

 区分所有法の改正は以前から噂されていたが、改正要点はいくつもある。しかし、その動機はすべて一つである。すなわち「マンションの2つの老い」に対する対処だ。2つの老いとは、人と建物の老い。

 改正の理由は以下のようなものだ。「築40年超の分譲マンションは103万⼾(令和2年末)から10年後には約2.2倍の232万⼾、20年後には約3.9倍の405万⼾となるなど、今後、⽼朽化したマンション(区分所有建物)が急増していく⾒込みである。今後に向けて、区分所有建物の管理や建替え等を円滑化する⽅策を総合的に検討する必要があり、所在等不明区分所有者の存在・区分所有者の管理意識の低下がある中、必要な賛成が得られず、区分所有建物の管理不全化を招くとともに、⽼朽化した区分所有建物の建替え等が困難になっていくことが予想される」

 令和4年4月1日から始まった「管理計画認定制度」なども、上記の考えを反映しもので、管理不全を未然に防ぐということが大前提の目的となっている。

 今回は、各種ある改正点から、一つだけを取り上げてご紹介する。それは「管理のための新たな財産管理制度」だ。考え方はおもしろい。所在等不明区分所有者がいる場合に、同所有者の有する専有部分の管理に特化した「所在不明専有部分財産管理者制度」を創設するというものだ。また同時に、「管理不全専有部分管理制度」なるものも検討されているようだ。これは、専有部分の管理が不適当なため他人の権利などが侵害され、または侵害される恐れがある場合に管理人に専有部分の管理をさせるという制度らしい。また「管理不全共用部分管理制度」も検討されており、これは区分所有者全員による共用部分の管理が不適当であることによって他人の権利等が侵害され、または侵害される恐れがある場合に管理人に共用部分の管理をさせる制度だ。実際には滋賀県で起こった建物崩壊の危険があるマンションなどに対応すべく考えられた制度だ。

 令和4年9月2日には法制審議会で諮問が行われ、今後も有識者会議「区分所有法制研究会」で議論が重ねられていくことになるが、まもなく報告書がまとめられる予定だ。

 区分所有法の改正ポイントは他にも多々あるのだが、また別の機会にご説明する。興味のある方は当ブログの資料ページをクリックしてもらうと、令和4年6月に国交省が発表した検討案を見れるようにしておいたので、ご参照ください。

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