長期修繕計画表の期間はー30年必要

  30年の計画期間。赤字でもいいの?

 今後、マンションの長期修繕計画表を作成する場合は、総会承認を起算日として30年間の計画表が必要だ
 国交省の発表では以下のようになっている。
「長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が30年以上で、かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれているように設定されていること。」

 30年って、相当な期間ですよね。築30年のマンションならば、築60年までの計画ということ。私の経験値でも築45年くらいが最高だから、築75年までの計画となる。正直、作成したことがない。この築年数になったら、どのような修繕工事が必要なのか、少し判断がつかない。

 もともと建築学会などは、建物の寿命を少し長く見ているし、必ずしも10年くらいで大規模修繕工事は必要ないという立場だと思う。

 また、あるマンションでは、大規模修繕工事として修繕をせず、劣化度にあわせて建物の箇所ごとに修繕している。たとえば今年は西面と南面。3年後に北面と東面というように。このような発注工事は、トータルとしては費用が高くなるが、それは、そのマンションの考え方だから、正しい方法というものはない。

 業界としても、保証期間を18年にするとか、工事のサイクルを伸ばす傾向にあることは事実である。そうすれば、30年間に2回というのは、まあ妥当といえるが、あくまで計画であるため、実際に工事を実施するかどうかは、直前の劣化診断等の結果によるだろう。

 問題は資金計画だと思われる。いくら間違いのない立派な計画修繕サイクルでも、資金が足りなければ、実際の工事はできない。要するに赤字の資金計画表では意味がない。というか、赤字の計画表は計画とならない。赤字とはお金がないことなので、計画は絵に描いた餅だ。つまり工事は実施しないという意味になる。これを承認する総会はないだろう。

 長期修繕計画表作成ガイドラインというもののほかに、修繕積立金ガイドラインも発表されている。

 同ガイドラインによる、20階建て未満で延べ床面積が5,000㎡以下のマンションでは、専有部の1㎡あたりの積立金の平均値が335円となっている。これは、(たぶん)かなり高額だ。60㎡の専有部だと積立金だけで月額20,100円となる。これに管理費や駐車場使用料をたすと月額40,000円近くなる。
 現在、日本のマンションは2つの老いをかかえており、築年数と居住者の高年齢化だ。年金生活者にとって、月額40,000円はつらいだろう。

 長期修繕計画表を30年間の期間で作成するということは、資金計画をきっちり作成するという意味がある。それは適正な積立金を割り出すことにつながるし必要なことでもある。しかし、同時に厳しい生活を強いられてもマンションの躯体を維持しなければならないことも意味する。

 マンション建て替え法や建て替え円滑化法が改正されても、なかなか建て替えはすすまないだろう。敷地売却という方法もあるが、これも実際にはかなり困難な手法だ。残された道は建物の延命だ。

 今回の長期修繕計画表作成及び修繕積立金ガイドラインは、きびしい現実をつきつけるが、機能不全マンションをなくす最善の道なのかも知れない。

修繕積立金ガイドライン(令和3年9月改訂)

 

 

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