長期修繕計画書作成の基本的な考え方。

 マンションに正式な長期修繕計画書が存在するかどうかは、そのマンションの価値に影響するという表現がよくなされます。「正式な」という表現は、総会で、公に長期修繕計画書が承認されているかどうかという意味です。
 管理費等の改定を行ったマンションは多いと思いますが、とくに修繕積立金改定の根拠となるのが、この長期修繕計画書です。マンションの向こう何年間かの修繕計画を賄えるだけの資金の徴収計画をこの計画書で明確なものとします。
 つまり長期修繕計画書が存在しているということは、資金計画もしっかりしていると判断するわけです。この長期修繕計画表と資金計画表は一体として決議しているマンションもあるし、別途に考えているマンションもあります。
 マンションを購入しようとする方は、不動屋を通じて、購入前にこの長期修繕計画書を閲覧し、そのマンションの組合運営がしっかりしているかどうかの検討材料とするわけです。
 一般的には、マンションは分譲されたときに、築後25年~30年ほどの長期修繕計画書を作成し、組合に引き渡すことが多いことは事実。しかし、その計画書は、しばらくお蔵入りしてしまい、一回目の大規模修繕工事の時期になって、初めて蔵からだしてきて再検討してみると、資金計画が予定どおりすすんでいなかった、ということはよくあることです。ですから、長期修繕計画書があるという事実だけでは安心材料にならず、常に(毎年でも)計画通りかどうかをチェックし、内容も再検討していくべきです。
 どのマンションにも、独自の特徴があり、なぜか一定箇所に漏水が頻発したり、設備が故障したりと、立地や建築仕様によって思わぬことがあるもの。ですから長期修繕計画書は、マンションによって、その特徴を反映したものとならざる得ません。

 さて、最近の国交省の考え方では、長期修繕計画書は、現時点から30年間を最低期間として、2回の大規模修繕工事を含むことが指針となってきました。つまり築20年のマンションだと築50年まで計画書を作成しなければいけないということです。このことがマンションの管理計画認定制度というものに反映され、マンションの活動が評価される時代となってきました。
 私は上記の指針に反対ではないのですが、じつはこのこのことは基本的な指針としては立派ですが、その長期修繕計画書が実情にあったものでなければならないと思っています。つまり、長期修繕計画書というのは、とても大切なものですが、その中身はマンションによってかなり違い、それを作成するのは、本当に大変な労力がいるということを言いたいのです。

 管理会社と委託契約を締結しているマンションでは、委託契約の内容に、長期的修繕計画を検討するという項目が入っています。しかし、実際の長期修繕計画書を作成することは委託料以外に別途有償となっているはずです。
 長期修繕計画書は無償で作成するという管理会社は、結構多いです。それは、一つの営業トークでもあります。「当社は無償で作成しますよ」というのは、よく聞く言葉です。ですが、それは簡易的な長期修繕計画書です。
 現在は、いろんな計画作成ソフトがあり、ネットなどには、簡易的な長期修繕計画書をだれでも、あるいくつかの数値を入力するだけで作成することができます。ですから簡易的な計画書はだれでも作れるのです。

 分譲時に作成した長期修繕計画書では、1回目の大規模修繕工事が1億円くらいの費用でしたが、実際の劣化診断を実施したうえで、見積書を作成すると2億円くらいかかった例を知っています。

 長期修繕計画書の内容自体に、10年ごとくらいの劣化診断費用と長期修繕計画書の作成費用の必ずいれておくべきです。これ、結構入っていません。

 長期修繕計画書に防水という項目があり、その中に屋上防水という項目があります。それが10年ごとくらいに○○○万円というような表示がされています。これが簡易的な長期修繕計画表です。しかし実際に屋上防水には、いろんな仕様があり、それは明記されていません。じつは屋上防水は仕様と範囲(部位の㎡数)が明確にされて、初めて費用が出ます。つまり長期修繕計画書は、(私は)仕様と範囲までを明記すべきだと思います。少なくとも範囲が明確であれば、仕様をかえても数字を変更しやすいので使いまわしができます。簡単に言うとセクセルで作成しておけば、数値をかえればある程度の費用ができます。
 この仕様と範囲までを明確にした計画書は、素人では作れないので、やはり有償でも専門家に依頼すべきだと思います。1回の作成費用が100万円でも、それを10年ごとに計画書に入れ込んでおけば、修繕費の中でペイできるはずです。

 やはり、長期修繕計画表は、安く済ますべきではないと考えています。

PDF Embedder requires a url attribute 長期修繕計画に関する変更点(国交省2021年4月14日)


 

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