最新のマンション標準管理規約(以降 標準管理規約)が昨年(令和3年=2021年)6月に発表された。標準管理規約は過去に数度、改正されているが、平成30年(2018年)、平成29年(2017年)と2回ほど一部改正を挟んで、今回ほど大きな改正は平成28年(2016年)以来の大改正だ。
あくまで私の個人的感想だが、昨年の大改正からほぼ1年強経過したが、最新の標準管理規約に基づいた大改正を行ったマンション管理組合はそんなに多くないと感じている。
標準管理規約が改正されるときは、多くの場合、社会的情勢の変化を受けてのことがほとんどだ。例えば、平成29年(2017年)の一部改正は、住宅宿泊業(いわゆる民泊)が実施される状況に対応するためのものだった。これは、明らかに東京オリンピックの開催による影響を受けたものだ。
今回の改正を「令和3年改正」と呼ぶなら、どのような社会的状況を受けたものか。改正内容を列記してみると、①ITを利用した総会・理事会②感染症への対応③置き配④専有部配管の扱い(コメント)⑤管理計画認定制度および要除却認定の申請⑥書類への押印廃止などについての条文が主な変更点だ(団地型標準管理規約の場合は除く)。①~⑥については、別のブログで詳細にご説明する。今回、このブログで語りたいことは、はたして、標準管理規約が改正された場合、すぐにそれに対応すべきなのかどうか、ということだ。
当然、各管理組合によって考え方は違う。しかし、今回の場合、この「令和3年改正」の内容が、あまり各管理組合に落ちてきていない、つまり、あまり知られていないような気がするのだ。管理会社も大手、中小かかわらず、あまり管理組合に情報を入れていないような気もする。ある大手管理会社の場合、管理規約の変更については、(組合独自の変更の場合は除いて)国交省からの標準管理規約の変更が発表された場合、ある時点で一斉に紹介説明をして各組合の判断を仰ぐようだが、まだその指令が上から下りてきていないとのことだ。
「令和3年改正」の背景は、一言でいえば「マンションの管理不全」への早い段階での対応策が必要だった、ということだと思われる。そこに感染症の問題が重なってきたというのが実情だ。
マンションの管理不全は、老朽化(躯体と人)の行く着く先だ。この問題は、今後の日本のマンション社会の抱える大きな問題だ。このような背景があるため、壮大なビジョンをもって対応すべきだ問題だ。そのため管理規約だけを改正したからといって同問題に対応できるわけではない。あらゆる問題を解決する手段の一つとして管理規約の改正が必要であるといだけだ。例えば、今年(令和4年)から始まった管理計画認定制度。これも管理規約の中の総会決議事項として条文を追加して初めて制度に申請できる。しかし管理規約の同条文を入れたからといって管理計画認定制度にはパスしない。それはまた別の問題だ。
たぶん専門家たちは、管理規約の改正は、後でよいと考えている節がある。管理計画認定制度の要件に適うマンションにしてから管理規約を変更しても遅くないと考えているのではないだろうか。これは、あくまで一例だが、今回の改正は、すべてが他の要素と絡み合っており、全体像を把握してから、規約変更をしても、まったく遅くないと感じる。