管理組合が管理会社を選定する場合、共通仕様書があったほうが良いと思われる。
「相見積もり」という言葉は、一般的に使用される言葉であり、修繕工事の際などにも、よく耳にすることだろう。どんな業界でも「競争入札」や「相見積もり」という言葉は使われるだろうが、言葉の定義については、結構曖昧だと思う。広辞苑には「相見積もり」という言葉は載っていない。「見積り」なら記載されている。まあ、簡単に言うと「数社(者)が見積書を提出する」と言った意味で誰もが捉えているのだろう。(私もそうです)
「相見積もり」を依頼した、という話を聞くと、「共通仕様書は存在するのですか」と改めて質問することが多い。意外に、共通仕様書?って、という返事をもらうことが多い。
もうお分かりだと思うが、共通仕様とは、同じ条件での入札ということである。これは誰かが作成しなければならない。当事務所は当事務所なりの共通仕様書を都度作成することとしているが、基本は、マンション管理業協会の雛形を利用させていただいている。これは一般の方でもHPからダウンロードできるので、利用されることをおすすめする。
共通仕様書で「相見積書」を依頼すると、比較しても差が出ないのではないか、と良く懸念の声を聞く。ハッキリ言って、それは全く無い(あくまで私の経験上だが、、、)。費用ももちろんだが、内容的にも必ず、違いが出てくる。共通仕様書で内容に差が出るとは不思議だと思われるだろうが、じつはいくら共通仕様書を作成して見積書を依頼しても、どの会社も、かならず以下のように返事をしてくる。「これと全く同じ仕様で出すことは不可能です」と。
それぞれの会社には、それぞれの委託方法と条件があるため、ぴったり共通仕様書には適合しないのだ。その時は、できる限り共通仕様に近い形で、見積書を提出してもらい、内容の差異についてはプレゼンの時に説明してもらうしかない。その違いに各社の特徴が表れることとなる。
さて共通仕様書にそって見積書が提出されたとしよう。たぶん、数社によるプレゼンが行われるだろう(もちろん見積書だけで決定する場合もあるかも知れない、、、)。いよいよ「どの会社にするか」という話になった時に、その決め手は何か?どうしても感覚や気持ちにたよることになる。つまり、どのように客観的に判断できるか、という問題だ。
もちろん客観的という言葉も、いろいろな捉えられ方をするが、ある程度は、見積書やプレゼンの内容を点数化することが必要だろう。それが、管理組合独自に行うのは、少し困難かもしれない。
その場合は、共通の質問を何十と用意しておき、それぞれの回答を5段階や10段階に分け、それぞれが点数をつけ、最終的に合計する。
これは私の経験だが、ある管理組合で、4社の相見積もりを行った。プレゼンのあとに、まず第一印象でもよいので最も好ましい会社を1社書いてほしいと質問して、各自に提出してもらった。その後で、それぞれが点数化をして合計をしてみると、かなりの方が、第1印象と違う会社を総合得点でトップに選んだ。これなどは、感覚や気持ちと客観的に点数化した判断結果が違うということの証明だ。
管理会社の選定は、管理規約で総会決議(一般的には普通決議ー議決権の過半数)と決められていることが一般的である。そのため、上記のプロセスは、あくまで理事会や委員会でのプロセスである。つまり理事会などで1社に絞り、その1社を総会議案として上程するのが一般的だ。たまに3社、4社を上程してしまい、どれも過半数にいかない、ということが生じる。またもっとも票を得た会社に委託するという判断をする管理組合があるが、それが過半数にいっていない場合は、規約違反となる可能性がある。もし数社を上程し、その獲得したトップの会社に委託するという場合は、上程議案書にトップの会社を選択するということをまず過半数決議しておき、その上でトップの会社を選ぶ必要がある。しかし、それでも少数の票でトップになった会社を選択するのは、あまり良くないと思われる。17世帯のマンションで4社も比較して4:4:4:5となった場合、遺恨が残るような気がする。やはり、管理会社の選定は、理事会や委員会で1社に絞り、その1社に絞った理由を上程議案として要領説明し、賛否を問う方法が良いだろう。