「第三者管理方式」という言葉が、マンション管理業界で、かなり浸透してきた。これは一言でいうと、外部の専門家を組合に招き入れるということを意味する。問題は、その招き入れ方だ。
例えば、当事務所の仕事の多くは、管理組合とのコンサル契約が主である。これは第三者管理方式ではない。外部の専門家として、管理組合と顧問契約を交わして業務(管理組合運営コンサル)を行っている。
第三者管理方式というのは、大きく分けると2つに分けることができる(あくまで私の分類)。1つは理事会を置き、外部の専門家を招きいれる方法。2つめは、理事会をなくし、外部の専門家を管理者とする方法だ。
この説明では分かりにくいかもしれない。明治学院大学教授である大野武先生の分類を借りると(マンション管理センター通信9月号-p26)、3つのパターンに分類されている。孫引きになるが一部引用させていただく。第1は、「理事会を設け、外部専門家を理事長あるいは理事会役員に選任(理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型)」。第2は、外部専門家を区分所有法上の管理者として選任、理事会が監事として外部専門家を監督する方法(外部管理者理事会監督型)」。この1と2は、上記で私が説明した理事会を置くパターンだ。理事会の役割が少し違う。そして大野先生の説明する第3は、理事会を設けず、外部管理者を区分所有法上の管理者として選任しつつ、特定の区分所有者を監事として選任、その監事と全区分所有者で構成される総会が外部管理者を監督するというパターン(外部管理者総会監督型)だ。
私(当事務所)がお世話になっているマンションで第三者管理方式をとっているマンションは第1の方法。つまり理事・監事外部専門家型だ。そこは理事長・監事ともに区分所有者で、私は一理事として理事会に参加し、普段はいろんな管理組合運営のサポートをしている。とくに管理会社が委託契約を受託しているマンションが多いことから、理事の立場として管理組合のOJTをするような形式だ。私自身は、そのマンションの専有部を所有しておらず、やはりオーナーとしての立場とは違うため、あくまで別の目線で一理事として、また専門家として組合運営に資する提案をしているつもりだ。これが個人的にはしっくりくるのだが、上記の第2、第3という形式は、外部専門家が管理者(理事長のケースが多いが)となる場合で、さすがにそのような仕事はまだ請け負ったことがない。
さて、2022年8月19日の日経新聞に「理事会なしマンション増加」と見出しをうち、サブタイトルで「住友不など第三者管理」という記事が出ていた。第三者管理方式は、ここまで説明してきたようにいくつかの種類がある。私は大きく2つに分けたが、上記の大野先生は3つに分けられている。最新(令和4年6月)のマンション標準管理規約コメント別添1には大野先生の3つの分類が例示されているが、この3つの分類がもう少し細かく分けられている。つまり、第三者管理方式というのは、いくつもパターンがあるのだ。しかし、上記の日経新聞の記事は、第三者管理方式として、住友不動産などが、自ら管理者となる方式を紹介している。住友不動産が分譲したマンションであるため実際の管理は住友建物サービスが管理者となるのだと思われるが、そこまで詳細には書かれていない。どちらにしても、管理会社が管理者として理事会を無くす方法(これは外部管理者総会監督型)だけが紹介されおり、あたかも読者は第三者管理方式とは、管理会社が管理者になることだととらえられない記事内容だ。
理事の成り手がなく、機能不全を未然に防ぐ方法として、これまでは投資型マンションやリゾートマンションで行われていた手法だ。
上記の大野先生は同コラム(マンション管理センター通信9月号)で、管理会社が第三者になる危険性をイギリスの区分所有制度などを例にして警鐘をならしている。それは日経新聞の記事とは、かなり趣が違う。
外部専門家をいれるのであれば、理事会を存置し、一理事として就任してもらうパターンから始めればよいと思う。理事会を無くすことは、区分所有者の管理意識が薄くなることでもあると思う。それじゃ、高齢化で理事会に出席できない人ばかりのマンションはどうするの?と言われれば、たしかに、少しつらいけど。