マンション管理組合の役員として監事を設置しているマンションは多いと思われる。私の場合、理事会が設置されているマンションで監事のいないマンションには出会ったことがない。この監事だが、区分所有法では、法人化された管理組合では設置義務があるが、法人化されていない管理組合には設置の義務はない。そもそも明記されていない。それでも、どの管理組合にも監事が存在するのは管理規約による。
マンション標準管理規約では第35条(役員)で監事の設置義務。また第41条(監事)では、監事の役割や権限について7項が明記されている。
社会にはいろんな組織があるが、多くの方が所属している会社という組織。そこには取締役会があり監事がいることが多い。こういった組織の仕組みは会社法という法律をもとにしている。私は、マンション管理組合は企業ではないが、有識者や国が区分所有法やマンション標準管理規約を作成する段階で、会社法が念頭にあったと感じる。
会社の代表取締役は管理組合の理事長だ。その関係は委任で成り立っている。委任関係であるから、行う業務は善管注意義務が発生するという考え方だ。この義務は、全役員に共通する。当然、監事にも共通する。
マンション管理組合でよくある話として、役員の輪番が回ってきた際に、仕事も忙しくあまり理事会にも出席できない。そのような人は、「監事」でいかがですが、理事会への出席義務はないし、年度末(総会前)に、監査報告書(A4用紙1枚が多い)に署名捺印してもらえれば、それでいいので。という話だ。
先にも述べた委任関係による役員の業務だが、善管注意義務違反ではないか。利益相反ではないか、という理事長に対する訴訟は多くの判例がある。しかし監事への善管注意義務違反における訴訟例はあまり多くないように感じる。
理事長の為すべき業務は多いと思われる。大変な仕事であることは明白だ。それは監事も同じであると私は考えるのだが、実際の現場では、そうなってはいない。理事の仕事がマニュアル化されている管理組合も見受けるが、監事の仕事はあまりマニュアル化されていないような気がする。
企業でも決算時には監査報告書を添付するが、この監査報告書はいつもきまり文句である。「年度収支決算について監査した結果、適正に処理されている云々」という文章である。もちろん、多くの場合が適正に処理されているので、それでよいのであるが、じつはそれ以外の雛形だってあるのだ。つまり、会計と業務の2分野に渡り監査した結果、「適正」「ほぼ適正」「やや不適正」「不適正」といった判断もありえるのである。
多くの管理会社が監査報告書の雛形を持っている。実際に決まった書式に監事が署名捺印をする。そのひな形は1つで「適正」であることを前提としている。
一部領収書が足りない。業務がやや散漫で予算を超えた等、将来や来期の目標を設定する戒めとして「やや不適正」という監査報告を出してもよいのだ。これは、必ずそうしろ、という話ではなく、監事の善管注意義務というのは、組合業務の執行及び財産の状況を監査し、適正かどうかを判断することなのであるから、大変にシビアな役割なのである、ということを言いたい。