以前、お世話になった管理組合から相談があった。「管理規約を改訂するのだが、民泊を禁止するかどうかで、落としどころがない」という内容だった。正直、それほど都心のマンションでもないので、今のこの時期に民泊が話題になった理由は分からない。
民泊禁止( or 民泊許可)に関する条項がマンション標準管理規約に入ったのは平成29年だ。マンション標準管理規約はたびたび改正されているが、近年では、平成23年、平成28年、令和3年と3度の大きな改正があった。民泊の規定については、3度の大改正時期ではなく平成29年に、同条項だけの改正として国交省が発表した。この時期は、東京オリンピックの開催前で、コロナ感染症の蔓延も発生していない。結局、コロナで民泊のブームは起こらなかったわけだが、今後も同規定は必要なのだろうか。
日本のマンションも築年数が経過し、老朽化が叫ばれ始めた。資産価値維持のために民泊を考える人もいるだろう。
平成29年6月に住宅宿泊事業法が制定され、翌年6月に施行された。これにより分譲マンションでも住宅宿泊業(これを民泊という)を行うことが可能となり、これに対応するためにマンション標準管理規約に民泊を禁止するか、可能とするかの選択ができる規定が発表された。
なぜ多くのマンションで民泊を禁止したいと考えるのか。いろんな人に話を聞いてみると、「ゴミが散乱する可能性がある」「オートロックの出入りに鍵の管理が不可能」「治安の悪化」などを理由とする人が多いように感じる。しかし、一方で、ゴミの散乱や鍵の保管は、オーナーの管理問題であり、管理をしっかり義務付ければ、自分の資産をどのように運営するかは自由ではないか、という意見もある。またゴミの散乱や治安等を問題にするならば、シェアハウスや賃貸でさえ同じ懸念が生まれる。すべてオーナーの管理体制が問題であり、民泊だけを禁止するのは妥当ではない、ということで民泊禁止規定を規約に盛り込まないというマンションもある。
そこでマンション標準管理規約では、コメントにおいて民泊でも、その形態を各種に限定するという考え方が盛り込まれているのだが、あまりそこまで考慮して規定を検討しているマンションは多くない気がする。次回ブログでは、民泊を実施または禁止するにあたり、いろいろな限定策について述べる。