マンション管理士の看板をあげて仕事をしている人が、どれほどいるのかは分からない。所属会などから収入の調査などもあったが、あくまで売上高を調査する程度で、仕事の内容までは分からない。「マンション管理士」という資格が業務独占ではなく、名称独占であるため、それぞれの提供する商品は種々雑多ではないかと思われる。
当事務所の商品としては、顧問契約やアドバイザー契約の中身を詳細に分けており、どれに対して成果物を求めるか。助言のみか。別契約で有償となるか、などを契約書の別表として分けている。その中で、大規模修繕工事のコンサルという分野がある。しかし、これも内容が細かく、組合と施工会社の調整から監理設計業務まで詳細にわたる。
大規模修繕工事の実施を検討しているマンション管理組合があり、すでに1年以上の検討期間を経過して、施工仕様、施工範囲、施工図などが完成し、見積取得の段階になった。施工予定会社から第1案としての見積書が提出されたが、果たしてそれが適正価格なのかどうかが分からない。そこで当事務所の役割として見積価格が適正域かどうかを調べてほしい、ということになった。工事は責任施工(管理組合と施工会社の2者で工事を行う方式)であるため当事務所がその役割を担うわけだ。
その時に役に立つのが、建築施工単価を示した専門雑誌やマンション修繕に特化した積算資料である。一般財団法人経済調査会という機関が出版している資料が役に立ち、業界では信頼感がある。当事務所がよく使用するのか「積算資料 マンション修繕編」であるが、じつはこの本は年1回出版され、現在使用しているのが2021年~2022年版である。この本は毎年10月中旬ごろに出版されるのだが、つぎの出版(2022年~2023年版)の時期が来た。とくにこの1年は塗料などが15%~30%くらい、どのメーカーも値上げしてきている。昨年の6月、今年の4月と立て続けに値上げ。もちろん塗料だけでなく設備系などは半導体の不足などで入荷できないとか、戸建てメーカーなどは木材も不足している。コロナ感染症の蔓延状況にウクライナ危機がかさなったことが理由だと言われているが、我々は国際政治の専門家ではないので、いかなる詳細な理由で建築資材や工事代金が高騰するのかは、本当のところは分からない。
つまり今回の適正価格の調査においては、上記の書のデータから塗料などを15%~30%ほど高い価格で表示して、見積価格と比較してみる必要が出てくる。
大規模修繕工事を実施する際に、必ず出てくる論議が、価格の適正化だ。しかし、これを市場調査と比較するマンション管理組合は少ないと思われる。結局、数社で相見積書を比較して安いところにする。もしくはプレゼンがよかったところにする、という決定方法が多い。コンサルや監理者がいても、最終決定は管理組合であるため、決定要件を決めていないと、このような決め方になる。それは決して間違いではないのだが、提出された見積額が適正価格の範囲であれば、その中で選択するという方法がもっとも腑に落ちる方法ではないだろうか。
昨年よりも10%~15%ほど修繕費用が高くなってきている気がするのだが、早く2022年~2023年版のデータが見たいところだ。