法務省は7月3日に区分所有法制の改正についてのパブリックコメントを開始した。年内(9月3日まで)に要綱案(法制審議会区分所有法制部会)を作成し、来年2月の法制審議会で採択を得れば、法務省に答申、通常国会で改正案を審議することになると思われる。
今回の中間試案では、監事選任についての案が追加されているのが特徴である。これは第三者管理者方式に対するもので、管理業者が管理理社に選任される場合を想定している。
今回の試案の考え方はこうだ。区分所有者以外の第三者、とくの管理会社が管理者として選任されている場合に、利益相反行為をいかに防止すべきかという、一つの監視体制として、監事選任を義務付けるというものだ(法人化されていない管理組合の場合を想定)。
あまり知られていないが、区分所有法では、法人化されていない管理組合では、監事に関する条文がない。多くのマンションは法人化されていないことが多いが、じつは理事会の条文もなく、唯一管理者についての決まりしか書かれていない。まして監事を設置する義務は管理組合は負っていないのだ。しかし実際には、管理規約で組合の運営組織として役員会を選任し、代表理事や各種理事、監事の選任について規定していることが多く、それに従って理事長等を選任しているのだ。※理事長は互選が多い
法人化されていない多くの管理組合において管理会社が管理者となった場合(第三者管理者方式)に、結局は、管理者を兼ねている管理会社が管理組合と委託契約を締結し、修繕工事を請け負うことが多いだろう。その場合の利益相反を見張る役として、監事の選任を義務化したらどうか、というのが今回の試案の一つである。
なるほど、組合員の権利を守るいい考え方だなあ、と思うけれども、これについては反対の意見もあるという。
本来、区分所有法は管理者がだれであろうと、善管注意義務が発生する。つまり善管注意義務違反における区分所有者に対する損害に対する賠償責任は管理者が負うこととなるため、あえて特別の条文を追加する必要性はないということらしい。
法人化されていない管理組合に関して区分所有法に役員組織(理事会や監事の設置)が明記されていないのは、管理組合の運営や建物の維持行為の責任は全区分所有者に平等にあるため、あえて運営組織について触れていないと思われる(区分所有法25条)。大型のマンションでは、管理組合の運営に全員が平等に関わって義務を果たすことは難しく、そのため管理規約を定め、運営形態を決めているのである。それを行うかどうかは、そのマンションの任意であるということなのである。